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北欧神話の神様は頭が弱い?―ロキとすぐれた大工の神話(TED)

王国

ライフハックとしてではなく、英語学習にも極めて有用なのが、著名人が10分程度のプレゼンを行うTEDです。

TED Talksとは、あらゆる分野のエキスパートたちによるプレゼンテーションを無料で視聴できる動画配信サービスのことです。10年ほど前にサービスが開始されてから、政治、心理学、経済、日常生活などの幅広いコンテンツが視聴できることから人気を集めています。

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TEDは4000を超える膨大な数の動画があります。しかし慣れないうちは、動画の探し方や視聴のコツが分かりませんよね。この記事では、数多くのTEDを見てきた管理人(塩@saltandshio)が、心を揺さぶられたトークをあらすじと一緒にご紹介します。

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アレックス・ジェンドラー:ロキとすぐれた大工の神話

アレックス・ジェンドラー:ロキとすぐれた大工の神話

不思議の王国、アスガルドには北欧の神々が住んでいました。オーティンの大きな館であるヴァルハラは、山々の上空にそびえたち、虹の橋であビフレストで結ばれていました。彼らの世界は素晴らしかったのですが、神々を滅ぼそうとしていた巨人と妖精トロールに対し無防備にそびえていました。しかし、見知らぬ者が現れ、神々に対しある提案を申し入れました。アレックス・ジェンドラーがすぐれた大工の神話を説明します(約4分半)。Alex Gendler / The myth of Loki and the master builder.

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北欧神話と神々が住む不思議の王国について

北欧神話を知らないという人でも、オーディンやトールという言葉はゲームやマンガで目にしたことがあるのではないでしょうか。

北欧神話とは、キリスト教化される前のノルド人(ノース人)の信仰に基づく神話のことをさし、スカンディナビア神話とも呼ばれています。ゲルマン神話の一種で、ノルウェー、スウェーデン、デンマーク、アイスランドおよびフェロー諸島に伝わっていたものをまとめて北欧神話と呼ばれています(フィンランド神話とは別系統のものとされる)。

北欧神話の舞台は、アスガルドと呼ばれる王国です。

不思議の王国アスガルドには、北欧の神々が住んでいました。オーディンの荘厳な館であるヴァルハラは山々の上空にそびえたち、虹の橋であるビフレストで結ばれていました。

Asgard, a realm of wonders, was where the Norse Gods made their home. There Odin’s great hall of Valhalla towered above the mountains and Bifrost, the rainbow bridge, anchored itself.

しかし、アスガルドは外敵に対して守りが弱く、お世辞にも難攻不落の場所ではありませんでした。その証拠に、神々の敵であるヨトゥンヘイムの巨人と妖精トロールは、虎視眈々と王国に攻め入る機会を探していました。

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無防備な王国にひょっこり現れた謎の大工

この「ロキとすぐれた大工の神話」は、腕っぷしの強さなら誰にも負けないトールが、遠征のためアレフガルドを離れているところから始まります。トールの不在を狙いすましていたかのように、ある日、アレフガルドに力強い灰色の馬に乗る若者が現れます。若者は神々に「今までに見たこともないような、巨人でも登れないほど高く、どんなトールでも壊せない頑丈な壁を作りましょう」と神々の前で公言します。

更に大工は、「壁を完成させたあかつきには、美しい女神フレイヤとの結婚と、空にある太陽と月が欲しい」と神々に要求します。これに対してフレイヤはもちろん、ほとんどの神々は難色を示しますが、唯一ひねくれ者のロキだけは大工の申し出を受け入れます。そして、ロキは神々に北欧神話のトリックスターらしい助言を神々に送ります。

ぺてん師でもあるロキは、よこしまな計画を仕組みました。彼は、神々が見知らぬ者の申し出を受け入れて、時間以内に壁を完成させられないような厳しい条件を提示すべきだと言いました。そうすれば 失うものはないし、壁の殆どをタダで建設できると言うのです。

The trickster Loki concocted a devious plan. He told the gods they should accept the stranger’s offer, but set such strict conditions that he would fail to complete the wall in time. That way, they would lose nothing, while getting most of the wall built for free.

多くの神が「それはナイスアイデア!」とロキの意見に賛同しているなか、女神フレイヤだけはこれに大反対します。当然です、いきなり見も知らない男に結婚させられると知ったら誰でもいやでしょう。ですが、オーディンをはじめとする神々はフレイヤの言葉に耳を貸さず、ロキのアイデアにGOサインを出してしまいます。そして、そのまま大工に「冬の間に壁を作る事!出来なかったら約束は守らないから!」という約束を取り付けてしまったのです。

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神々の予想に反して壁を作り続けた謎の大工

神々が大工に示した条件は以下の三つです。

  1. 壁はひと冬の間に完成させること。
  2. 一日でも夏に入れば壁は失敗作とする。
  3. 誰かに手伝って貰うのはNG、一人で作る事。

さらに、神々は大工に「もし夏の始まりの日までに、一部分でも未完成ならば完成とは認めない。あと、アスガルドの大地も傷つけないように」という、あまりに乱暴な約束を条件を出します。一方の大工は神々の難題に気分を損ねることも無く、「わかりました」と頷くとすぐに作業に取り掛かりました。

最初のうちは、大工の様子を見ながら「うまくいくわけがない」とほくそ笑んでいた神々ですが、大工が本当に一人っきりで、雨の日だろうが雪が降ろうがお構いなしに壁を作っていく姿を見て、だんだんと怖くなっていきます。

見知らぬ者は建築を続け、(大工の馬である)スヴァジルファリは(石を)引き続けました。雪でも、雨でも、彼らの仕事の進度は遅くなりませんでした。夏までわずか3日残すのみでしたが、壁は高く頑丈に立っており、あとは門を建てれば完成です。

神々たちは愕然としました。肥沃の女神を永遠に失うだけでなく、太陽と月なしでは世界は永遠に暗闇に包まれることに気付いたのです。

The stranger kept building, Svadilfari kept hauling, and neither snow nor rain could slow their progress. With only three days left until summer, the wall stood high and impenetrable, with only the gate left to be built.

Horrified, the gods realized that not only would they lose their fertility goddess forever, but without the sun and moon the world would be plunged into eternal darkness.

絶対にできるわけがないと高を括っていた神々は、完成間近な壁を見てドンドン焦り始めます。なぜなら肥沃の女神フレイヤを永遠に失うだけでなく、太陽と月を失えば世界は永遠に暗闇に包まれることに(いまさらに)気付いてしまったからです。

塩(運営者)

気付くの遅いよ!!(滝汗)

困った神々は、「そもそもこうなった原因は、ロキが大工を煽ったからだ」と責任転嫁します。自分たちでは解決できないとサッサとサジを投げた神々は、ロキにどうにかしなさいと問題を丸投げしてしまったのです。

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大工の正体とその最後

神々の思いもよらないむちゃぶりを受けて、ロキはおおいに慌てふためきます。なぜならロキは、確かに神様ではあったものの、そもそも頭のネジが何本もはずれている『かなり残念な』神様だったからです。

ロキは、突然に自分が愚かだったことに気付きました。大工への対価の支払いを回避する方法を見つけなければ、想像を絶するほどの苦痛を伴う死に至らしめてやると、神々はロキを脅しました。するとロキは事態の収拾を図ることを約束し、走ってその場を離れました。

Suddenly, Loki didn’t feel so clever. All of his fellow gods threatened him with an unimaginably painful death if he didn’t find some way to prevent the builder from getting his payment. So Loki promised to take care of the situation, and dashed away.

翌朝、大工は最後の石材を回収するために、スヴァジルファリという名の自分の馬を呼び寄せようとします。しかし、スヴァジルファリは大工のところに行こうとしません。それどころか、草原の向こうから現れた美しい雌馬に一瞬で心を奪われ、あっという間に手綱を外してその場からいなくなってしまいました。

まさかの展開に、大工はこの出来事の裏には神々が手を引いていると気が付き激怒します。そのうち、だんだんと大工の姿がボロボロと剥がれて、真の姿である恐ろしい山の巨人に戻りました。巨人の姿に戻を見た神々は「壁を作ったのは大工じゃなく、敵の巨人だった!これはルール違反!」と、工事前に大工と交わした約束を即行取り消してしまいます。

塩(運営者)

ここまでくると、どっちもどっちですけれどね…

約束を反故にした神々に対して、喧嘩上等とばかりに立ち向かっていった巨人でしたが、遠征から戻ってきたトールの手によってあっけなく命を落とします。その後、神々は自分たちの手で最後の石材を乗せて壁を完成させました。

(ほぼほぼ巨人の功績ですが)壁の完成に神々は揃って喜び合います。しかし、なぜかそのなかに尻拭いを任されていたロキの姿はありませんでした。

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まとめ:残ったのは神馬スレイプニルと黙ったままのロキ

数か月経って、ようやくロキはアレフガルドに帰ってきました。神々は、ロキの横にいる八本脚がある美しい灰色の子馬を見て驚きます。

その子馬はスレイプニルという素晴らしい馬に成長し、やがてオーディンが乗り、風を追い抜くほどの馬になったのです。

The foal would grow into a magnificent steed named Sleipnir and become Odin’s mount, a horse that could outrun the wind itself.

スレイプニル
スレイプニル

「しかし、彼が一体どこからやって来たのかは、ロキは話したがりませんでした……――」という言葉で、TED talkは締められています。ここで「はい、おしまい」だとあまりに不親切なので、なぜロキはこの馬の詳細を語りたがらなかったのかをご紹介します。

じつは、スヴァジルファリをたぶらかした雌馬は、変身したロキだったのです。大工からスヴァジルファリを引き離したロキは、そこで逃げ切ってお役御免のはずでした。しかし、スヴァジルファリに熱心に求愛されたのでしょう。アレフガルドがゴタゴタしている最中に、ロキはスヴァジルファリの子を妊娠して、産まれたスレイプニルを大切に育てていたのです。

以上が、ロキが自分が不在にしていた話を他の神々に話したがらない理由でした。悪戯好きの神様だって話したくないがあるというのも、なんだか人間ぼくって親近感がわきますね。

さて、北欧神話にはこのほかにも、ロキが蒔いた種によって大騒動になるお話が多くあります。一見すれば、話を引っ掻き回す問題児のロキですが、じつはそのおかげで神々は多くの副産物を手に入れています。今回のスレイプニルもそうですし、トールがもっているミョルニルと呼ばれるハンマーも、以前にロキが蒔き起こした騒動で作られたものです。これらのものは、北欧神話の終盤で世界の行方を左右する非常に重要なアイテムになっていきます。

「ものごとに偶然は無く、すべては必然である」、そんな言葉を考えさせられる「ロキとすぐれた大工の神話」でした。

英語全文

Asgard, a realm of wonders, was where the Norse Gods made their home. There Odin’s great hall of Valhalla towered above the mountains and Bifrost, the rainbow bridge, anchored itself. But though their domain was magnificent, it stood undefended from the giants and trolls of Jotunheim, who despised the gods and sought to destroy them.

<全文を読む>▼クリック▼

One day when Thor, strongest of the gods, was off fighting these foes, a stranger appeared, riding a powerful gray horse. The visitor made the gods an astonishing offer. He would build them the greatest wall they’d ever seen, higher than any giant could climb and stronger than any troll could break. All he asked in return was the beautiful goddess Freya’s hand in marriage— along with the sun and moon from the sky.

The gods balked at this request and were ready to send him away. But the trickster Loki concocted a devious plan. He told the gods they should accept the stranger’s offer, but set such strict conditions that he would fail to complete the wall in time. That way, they would lose nothing, while getting most of the wall built for free. Freya didn’t like this idea at all, but Odin and the other gods were convinced and came to an agreement with the builder. He would only have one winter to complete the wall. If any part was unfinished by the first day of summer, he would receive no payment. And he could have no help from any other people. The gods sealed the deal with solemn oaths and swore the mason would come to no harm in Asgard.

In the morning, the stranger began to dig the foundations at an astonishing speed, and at nightfall he set off towards the mountains to obtain the building stones. But it was only the next morning, when they saw him returning, that the gods began to worry. As agreed, no other people were helping the mason. But his horse Svadilfari was hauling a load of stones so massive it left trenches in the ground behind them.

Winter came and went. The stranger kept building, Svadilfari kept hauling, and neither snow nor rain could slow their progress. With only three days left until summer, the wall stood high and impenetrable, with only the gate left to be built. Horrified, the gods realized that not only would they lose their fertility goddess forever, but without the sun and moon the world would be plunged into eternal darkness. They wondered why they’d made such a foolish wager— and then remembered Loki and his terrible advice.

Suddenly, Loki didn’t feel so clever. All of his fellow gods threatened him with an unimaginably painful death if he didn’t find some way to prevent the builder from getting his payment. So Loki promised to take care of the situation, and dashed away.

Outside, night had fallen, and the builder prepared to set off to retrieve the final load of stones. But just as he called Svadilfari to him, a mare appeared in the field. She was so beautiful that Svadilfari ignored his master and broke free of his reins. The mason tried to catch him, but the mare ran deep into the woods and Svadilfari followed.

The stranger was furious. He knew that the gods were behind this and confronted them: no longer as a mild-mannered mason, but in his true form as a terrifying mountain giant. This was a big mistake. Thor had just returned to Asgard, and now that the gods knew a giant was in their midst, they disregarded their oaths. The only payment the builder would receive— and the last thing he would ever see— was the swing of Thor’s mighty hammer Mjolnir.

As they set the final stones into the wall, the gods celebrated their victory. Loki was not among them, however. Several months would pass before he finally returned, followed by a beautiful gray foal with eight legs. The foal would grow into a magnificent steed named Sleipnir and become Odin’s mount, a horse that could outrun the wind itself. But exactly where he had come from was something Loki preferred not to discuss.

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本を読む気はないけれど、北欧神話がどんなものか知りたいと思った方は、中田敦彦さんのYouTube大学がオススメです。

中田敦彦のYouTube大学より

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