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まるで北欧神話のねずみ男!―ロキと死のヤドリギの神話(TED)

Mistletoe

ライフハックとしてではなく、英語学習にも極めて有用なのが、著名人が10分程度のプレゼンを行うTEDです。

TED Talksとは、あらゆる分野のエキスパートたちによるプレゼンテーションを無料で視聴できる動画配信サービスのことです。10年ほど前にサービスが開始されてから、政治、心理学、経済、日常生活などの幅広いコンテンツが視聴できることから人気を集めています。

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TEDは4000を超える膨大な数の動画があります。しかし慣れないうちは、動画の探し方や視聴のコツが分かりませんよね。この記事では、数多くのTEDを見てきた管理人(塩@saltandshio)が、心を揺さぶられたトークをあらすじと一緒にご紹介します。

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イーサルト・ギレスピー:ロキと死のヤドリギの神話

イーサルト・ギレスピー:ロキと死のヤドリギの神話

バルドルはアスガルズ中で最も優しく誰よりも愛される存在でしたが、最近、自分の死が差し迫っているという恐ろしい夢に悩まされていました。不吉な予兆から息子を守ろうと、女王フリッグは九つの世界を巡り、バルドルを傷つけないよう生きとし生けるものに頼みました—ただひとつのものを除いて。イーサルト・ギレスピーがバルドルの死の神話を物語ります(約5分)。Iseult Gillespie / The myth of Loki and the deadly mistletoe.

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登場人物の紹介と北欧神話について

「ロキと死のヤドリギの神話」は北欧神話にまつわるお話で、誰からも愛されている神様の身に起きた不幸な出来事と、事件をとりまく神様たちを描いています。お話を紹介する前に、北欧神話と登場人物について紹介しましょう。

北欧神話とは、キリスト教化される前のノルド人(ノース人)の信仰に基づく神話のことをさし、スカンディナビア神話とも呼ばれています。ゲルマン神話の一種で、ノルウェー、スウェーデン、デンマーク、アイスランドおよびフェロー諸島に伝わっていたものをまとめて北欧神話と呼ばれています(フィンランド神話とは別系統のものとされる)。

この物語の登場人物は主に以下の人たちです。

バルドルは、主神オーディンと女王フリッグの息子で、平和の女神ナンナを妻とする真実と光の神で、アスガルズ中で最も優しく誰よりも愛される存在でした。

Baldur— son of All Father Odin and Queen Frigg, husband of Nanna the Peaceful, and God of truth and light— was the gentlest and most beloved being in all of Asgard.

各登場人物や場所についてもう少し詳しく紹介しましょう。

  • バルドル:光の神。最も賢明で、美しく光り輝く美貌と白いまつ毛を持ち、雄弁で優しいとされ、やや優柔不断な面もあったが彼の裁きは不変であるといわれる。
  • オーディン:北欧神話の主神にして戦争と死の神。詩文の神でもあり吟遊詩人のパトロンでもある。魔術に長け、知識に対し非常に貪欲な神であり、自らの目や命を代償に差し出すこともあった。
  • フリッグ:主神オーディンの妻でバルドルの母。最高位の女神。オーディンと共に玉座フリズスキャールヴに座す権利を持つ。優れた予言の能力を持っているが決して口にすることはない。
  • ナンナ:北欧神話の女神の1柱であり、ネプの娘であり、バルドルの妻、フォルセティの母。
  • ホズル:盲目の神。バルドルの弟で、オーディンの息子。
  • ロキ:変身術が得意。邪悪な気質で気が変わりやすく、ずるがしこさでは誰にも引けを取らない悪戯好きの神。しょっちゅう嘘をついている。
  • アースガルズ:北欧神話に登場するアース神族の王国。死すべき定めの人間の世界・ミズガルズの一部であるともいわれる。(Wikipediaより)
  • ブレイザブリク:北欧神話に出てくる宮殿。ブレイザブリクとは「幅広き輝き」という意味。

どんな神々が登場するのかわかったところで、さっそくロキと死のヤドリギの神話について紹介しましょう。

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神様だって悪夢に悩まされる

誰からも愛され、宮殿ブレイザブリクにいる臣下たちにもやすらぎを与えていたバルドルですが、そんな彼にも悩みがありました。このところ毎晩、自分に死が迫っている夢を見ていたのです。バルドルから話を聞いた女王フリッグは彼の身を案じてし、九つの世界を巡って生きとし生けるものにバルドルを傷つけないよう懇願しました。

出会ったものはすべてその優美さに心打たれ、どんな動物も、自然の力も、流行り病も、 植物も、刃も、虫も、喜んで約束しました。

Her grace moved each being she encountered. Every animal and element, every plague and plant, every blade and bug gladly gave their word.

こうして全世界を周り終えた女王フリッグは、宮殿ブレイザブリクで盛大な祝いの宴を開きました。おおいに酒を飲んで酔っ払った神々は、本当にバルドルが不死身になったのかと、冗談交じりに代わる代わる物を投げつけ始めました。もちろん、不死身となったバルドルにはなにも効きません。

その様子をつまらなそうに見ている神様がいました。悪戯好きの神様、ロキです。

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ひねくれ者の神様ロキは悪夢の成就に大忙し

ロキについては、「トールの最高の贈り物」のなかで詳しく紹介していますが、一言でいうと「ゲゲゲの鬼太郎」でいうところのねずみ男のような神様です。

『ゲゲゲの鬼太郎』(ゲゲゲのきたろう)は、水木しげるの日本の漫画作品、および、それを原作とした一連の作品群の総称。妖怪のイメージを世間に浸透させた水木の代表作であり、「妖怪漫画」を一つのジャンルとして確立させた作品である。

ねずみ男は、『ゲゲゲの鬼太郎』に登場する、主人公・鬼太郎の悪友。人間と妖怪との間に生まれた半妖怪。欲に目が眩んで鬼太郎の敵側に就くも結局最後に失敗する、鬼太郎や猫娘に懲らしめられる、改心して鬼太郎に味方するというのが典型的な行動パターンで、善悪の中間に位置するトリックスターとしての役割を担っている。

ゲゲゲの鬼太郎とねずみ男 / Wikipediaより

ロキは予定調和で戦っている神々とバルドルの様子を苦々しく見つめながら、こんなにも話が上手くいくわけがないと思います。そこでロキは老婆に化けると、フリッグのそばに近寄り「ありとあらゆる者がバルドルに誓いを立てたわけじゃないだろう」としつこく尋ねます。

あまりのしつこさに辟易したフリッグは、とうとう「ヤドリギのところには行かず、誓いを立てていない」と漏らしてしまいます。「取るに足らない雑草を恐れる者があるか」と言うフリッグの言葉を聞くと、すぐにロキはヤドリギの元に行って一枝採り、そのまま宮殿へととんぼ返りしました。

戻ってくると宴は一層盛り上がっていましたが、楽しんでいない神もいました。バルドルの弟ホズルは盲目で武器を持たず、取り残されていました。これは利用できると見たロキは遊びに加わるよう、ホズルに持ちかけました。

When he returned, the festivities had grown even rowdier. But not every god was enjoying the party. Baldur’s brother Hodur, who was blind and weapon-less, sat dejected. Seeing his opportunity, the trickster slyly offered Hodur a chance to participate.

神々は相変わらずバルドルに物を投げつけ戯れていました。ロキはホズルにヤドリギを構えさせて狙いをバルドルに向けると、力いっぱい打ち込むように言いました。ロキの言葉に従ったホズルは、意味も分からないままそのままバルドルの体を貫いてしまったのです。

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死んでしまった神様を生き返らせることは出来るのか

ヤドリギで射貫かれたバルドルは息絶えると、すぐに世界から光が消えて絶望(ラグナロク)が押し寄せました。嘆き悲しむ群衆の中から、勇気の神ヘルモーズが歩み出ると、「オーディンの並外れた馬の助けがあれば行けぬところはない」と進言します。ヘルモーズの言葉を聞いたオーディンは彼に馬を与えます。

そうしてオーディンの馬を借りたヘルモーズは、九日九晩ものあいだ馬をかけて冥界の女王ヘルの元へと辿り着きます。そして、ヘルにバルドルを家族の元へと返してほしいと懇願しました。

ヘルは情けをかけようかとも考えましたが、神々の悼みがどれほど深いか知りたいと思い、生きとし生けるものがバルドルのために涙を流すことを示せたなら、バルドルの魂を手放そうと約束しました。

Hel considered taking pity, but she wanted to know the extent of the gods’ mourning. She agreed to relinquish Baldur’s soul— if Hermod could prove that every living thing wept at Baldur’s death.

急いで冥界から生者の地に戻ったヘルモーズは、フリッグが誓いを立たせたありとあらゆる生き物に会いました。もちろん、全員が涙を流してバルドルの死を悼み、彼の帰還を願いました。しかし、その様子を苦々しい面持ちで見ている神がいました。もちろん、ロキです。

自分のしたことを無にされたくなかったロキですが、露骨に邪魔をすれば自分がバルドルを事件の主犯格だというのがバレてしまいます。そこで、恐ろしい巨人に変身したロキは、ヘルモーズが最後に訪れる場所へと身を潜めました。

しばらくして現れたヘルモーズに対して、唸る風と岩々はバルドルへの愛情を明言しましたが、間に立った巨人(ロキ)はまったく愛情を示さず、むしろ嫌悪感を露わにしました。どんなにヘルモーズが頭を下げても巨人が一滴も涙を流さなかったため、ヘルモーズは希望が打ち砕かれてその場で嘆き悲しみました。

すると、奥の洞窟からヘルモーズの様子を馬鹿にするような笑い声が聞こえてきました。その声は、アスガルズの住人なら誰でも知ってロキの歪んだ笑い声です。騙されていたことに気付いたヘルモーズはすぐにロキに飛び掛かります。しかし、ロキはあっという間に鮭に化けると滝の中へと逃げ込みました。そのまま逃げ切ろうとしたロキでしたが、さいごはトールに捕まえられてしまいます。

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まとめ:まるで天岩戸のようなお話

トールに捕まったロキは、身を潜んでいた洞窟へと連れ戻されると、毒蛇と一緒に縛り付けられました。

永久に縛られたロキの額には毒蛇の毒が滴り落ち、アスガルズの光明を消したことを罰しました。

Here, Loki would remain chained until the end of days— the serpent dripping venom on his brow as punishment for dousing Asgard’s brightest light.

塩(運営者)

TEDでは話がここで終わっており、その後の登場人物たちがどうなったかは紹介されていませんので、後日談を紹介します。

  • ホズル:バルドルを殺したあと、弟のヴァーリに復讐され殺さる。ラグナロクの後は、バルドルと共に復活して和解し、新たな世界を治める若い神の一人となる。
  • ナンナ:バルドルの死に打ちのめされて後を追うように死んでしまう。
  • バルドル:ラグナロクを迎えて世界が滅んだあと、やがて新しい大地が浮かんできて、ヘズと共によみがえる。

まるで世界が闇に覆われ、数日の後に光を取り戻す話はまるで天の岩戸に閉じこもったアマテラスオオミカミのようです。じつは各国の神話を読んでみると、国も場所も違うのに不思議と似たようなお話があります。じつはどれも同じ話だったのでは?と疑ってしまうほどです。

多くの神話に触れながら様々な類似点を探してみると、それが嘘か真かはさておきたくさんの発見があります。ただ物語として読むのも良いですが、別の視点から見つめてみるとまったく違った物語に見えてしまうのも、神話の面白さです。

ちなみに、毒蛇に縛り付けられたロキですが、つねに毒液が頭に滴り落ちているわけではありません。いつもは妻のシギュンが器を持って毒液を防いでくれています。

塩(運営者)

神々もそこまで非道じゃないのと、悪戯好きのロキにも奥さんがいたんだね

しかし、その器がいっぱいになると、シギュンは毒を捨てにその場を離れます。シギュンが戻って来る間にも毒蛇は毒液を流し続けるため、毒液が頭にあたるとロキは苦痛のあまり大声で叫び身を捩り苦しみます。なんと、その影響で地上に起きるのが地震なのだそうです。

ここで神話と地震を繋げてくるあたりに、むかしの人の想像力の豊かさを感じますね。

英語全文

Baldur— son of All Father Odin and Queen Frigg, husband of Nanna the Peaceful, and God of truth and light— was the gentlest and most beloved being in all of Asgard. In his great hall of Breidablik, Baldur’s soothing presence eased his subject’s woes. But lately, he was plagued by troubles of his own. Every night, Baldur had gruesome visions foretelling his own imminent death.

<全文を読む>▼クリック▼

Determined to protect her son from these grim prophecies, Queen Frigg travelled across the nine realms, begging all living things not to harm Baldur. Her grace moved each being she encountered. Every animal and element, every plague and plant, every blade and bug gladly gave their word.

Frigg returned to Breidablik, and threw a great feast to celebrate. Wine flowed freely, and soon the gods took turns testing Baldur’s immunity. Lurking in the corner, Loki rolled his eyes. The trickster god had never cared for Baldur the Bright, and found his new gift profoundly irritating. Surely there was a flaw in Frigg’s plan.

Taking the form of an old woman, Loki crept to Frigg’s side and feigned confusion. Why were the gods attacking sweet Baldur, whom they all loved so dearly? Frigg told her of the oaths, but the old woman pressed on. Surely you didn’t receive a vow from everything, she asked. Frigg shrugged. The only being she hadn’t visited was mistletoe. After all, what god could fear a trifling weed?

At this, Loki dashed outside to find a sprig of mistletoe. When he returned, the festivities had grown even rowdier. But not every god was enjoying the party. Baldur’s brother Hodur, who was blind and weapon-less, sat dejected. Seeing his opportunity, the trickster slyly offered Hodur a chance to participate. Loki armed him with mistletoe, guided his aim towards his brother, and told Hodur to hurl with all his might.

The mistletoe pierced Baldur’s chest with deadly force. The god’s light quickly flickered out, and despair swept over the crowd. Within moments, the impact of Baldur’s death could be felt across the nine realms. But from the weeping masses, Hermod the Brave stepped forward. The warrior god believed that with the help of Odin’s mighty steed, there was no plane he could not reach. He would travel to halls of Hel herself, and bring Baldur home.

The god rode for nine days and nine nights, past halls of corpses and over paths paved with bone. When he finally reached the Queen of the Underworld, Hermod begged her to return Baldur to his family. Hel considered taking pity, but she wanted to know the extent of the gods’ mourning. She agreed to relinquish Baldur’s soul— if Hermod could prove that every living thing wept at Baldur’s death.

Hermod shot back to the land of the living. He met with every creature that Frigg visited earlier— all of which cried for Baldur and begged for his return. Meanwhile, Loki watched Hermod’s mission with disdain. He would not let his work be so easily undone, but if he interfered too boldly it might reveal his hand in Baldur’s murder. Disguising himself as a ferocious giant, he hid himself at Hermod’s final stop.

When the warrior came, the howling wind and craggy rocks each declared their love for Baldur. But the giant within spewed only contempt for the deceased. No matter how much Hermod begged, she would not shed a single tear.

With his last hope dashed, the god began to mourn Baldur a second time. But an echo from the cave rang out above his sobs. Loki’s twisted cackle was well-known to every Asgardian, and Hermod realized he’d been tricked. As he leapt to accost the trickster, Loki took the form of a salmon and wriggled into the waterfall. His escape was guaranteed, until Thor arrived at the scene.

Dragging Loki back to the cave, the gods bound him with a poisonous serpent. Here, Loki would remain chained until the end of days— the serpent dripping venom on his brow as punishment for dousing Asgard’s brightest light.

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中田敦彦のYouTube大学より

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