TED

神話でも口は禍の元!―トールの最高の贈り物(TED)

ハンマー

ライフハックとしてではなく、英語学習にも極めて有用なのが、著名人が10分程度のプレゼンを行うTEDです。

TED Talksとは、あらゆる分野のエキスパートたちによるプレゼンテーションを無料で視聴できる動画配信サービスのことです。10年ほど前にサービスが開始されてから、政治、心理学、経済、日常生活などの幅広いコンテンツが視聴できることから人気を集めています。

RareJob English Lab

TEDは4000を超える膨大な数の動画があります。しかし慣れないうちは、動画の探し方や視聴のコツが分かりませんよね。この記事では、数多くのTEDを見てきた管理人(塩@saltandshio)が、心を揺さぶられたトークをあらすじと一緒にご紹介します。

ビジネス英会話を効率よく身につけたい方におすすめスクール

シェーン英会話
シェーンは1977年の創業以来、ネイティブ講師が英語を英語で教える「直接教授法」を採用しています。首都圏におけるスクール拠点数は、ネイティブ講師の英会話スクールでNo.1。駅から近いスクールが多いので通いやすく時間を有効に使えます。

スピークバディ パーソナルコーチング
1日1時間の短期集中トレーニングで、あなたの英語力向上をコーチが全力でサポートします。あなたの英語の世界が、劇的に変わります。

スコット・A・メラー:トールの最高の贈り物

スコット・A・メラー:トールの最高の贈り物

悪戯好きの神、ロキはトールの屈強な拳の中で困惑しながら、もがいています。 その前の夜、ロキはトールの妻、シフに忍び寄り彼女の美しい髪を切り落としてしまいました。どうにかして髪を元に戻すため、ロキは小人達の元に駆け込んで神々へ贈り物を作らせるように仕向けました。鍛冶屋である小人達同士は、ライバルに勝とうとして黄金で作られた宝物を作ります。これにはミョルニルというハンマーが含まれていました。スコット・A・メラーがトールの伝説のハンマーの誕生秘話を辿ります(約4分半)。Scott Mellor / How Thor got his hammer.

[PR]無料体験レッスン実施中!全国208校、創業40年の老舗英会話スクール【シェーン英会話】

主人公のロキは北欧神話に登場する悪戯好きの神様

「トールの最高の贈り物」は、ロキという神様が巻き起こしたすったもんだのドタバタ劇です。お話を紹介する前に、まずロキの紹介をしましょう。

Wikipediaによれば、ロキ(古ノルド語: Loki)は、北欧神話に登場する悪戯好きの神です。北欧神話とは、キリスト教化される前のノルド人(ノース人)の信仰に基づく神話のことをさし、スカンディナビア神話とも呼ばれています。ゲルマン神話の一種で、ノルウェー、スウェーデン、デンマーク、アイスランドおよびフェロー諸島に伝わっていたものをまとめて北欧神話と呼ばれています(フィンランド神話とは別系統のものとされる)。

ロキという名前は「閉ざす者」、「終わらせる者」という意味です。変身術を得意として、男神であるが時に女性にも変化したり、自分が変身するだけでなく、他者に呪文をかけて強制的に変身させることもできました。美しい顔を持っていましたが、邪悪な気質で気が変わりやすく、ずるがしこさでは誰にも引けを取らずによく嘘をつく神様でした。

元は火を神格化した存在だったと考えられており、ワーグナーの楽劇『ニーベルングの指環』に登場するローゲ(元の神話におけるロキのポジションに当たる神)はその点が強調されています。では、そんなロキがどんな悪戯をして、その結果どんな嘘をついたのでしょうか。

[PR]まずは無料カウンセリング”続けるため”の オンライン英語コーチ「スピークバディ パーソナルコーチング」

冗談のつもりが大事件に!

そもそもの発端は、ロキが戦神として知られているトールの妻、シフに忍び寄って彼女の美しい髪を切り落としてしまったことに始まります。ロキとしては『ちょっとした』冗談のつもりだったのですが、冗談で済まなかったのが夫のトールです。

怒り狂ったトールはロキを羽交い締めにして、ロキのありとあらゆる骨を砕かん勢いでした。シフの髪の毛を元に戻す約束をして、どうにか解放されたロキでしたが、今度はシフの髪を元に戻さなくてはいけないという超難題にぶち当たりました。

シフの夏の小麦畑の様な美しい金色の髪を元に戻すのは、難題どころか到底無理なお話です。しかし、古今東西、狡賢い人は(自分を守るためなら)よく頭が働きます。ロキはある伝説的な職人達が、山奥にある王国に住んでいることを思い出します。なんでも作れる彼らなら、きっとシフの髪の毛も作れるだろうとロキは考えました。

ロキは山奥にある小人達の王国に急いで向かいながら、たどり着くまでの間にも、どうやって彼の頼みを小人達に引き受けさせようかと悪巧みをしていました。

Even before he arrived, the wily Loki was already scheming how he would get the dwarves to do his bidding.

そうして思い付いたのが、『2つの家族を敵対させる』という作戦でした。

塩(運営者)

結局、悪巧みするんだね……

[PR]しちだの魔法ペンなら35日でバイリンガルに!楽天4部門1位の英会話!<七田式>

自分を守るため嘘をつきまくるロキ

ロキの考え付いた作戦はこうです。

  1. イーヴァルディの凄腕の息子達を訪れて、ライバルのブロックとエイトリ兄弟が「自分たちこそ世界一の鍛冶屋である」と言い張っており、それを証明するためにブロックとエイトリ兄弟に戦いを挑もうとしていることを伝える。
  2. ブロックとエイトリ兄弟にも同じ話をして、イーヴァルディの凄腕の息子達が自分たちに戦いを挑もうとしていることを伝える。
  3. 戦いのルールは、それぞれの家族が神々のために3つの贈り物を作ること。どちらの作品が優れているか、神様たちに証明してもらう(そのなかに、こっそり(?)シフの髪の毛も含めた)。

しかし、ここで思わぬ誤算が生じます。ブロックとエイトリ兄弟はロキの嘘を簡単に見抜き、「ロキが自分の頭を賭けに差出すのなら参加しても良い」と言い放ったのです。それを聞いて今度はロキが困ってしまいました。

そうなると、ブロックとエイトリが勝てばロキは頭を失ってしまいます。ロキは断ることもできなかったので、どうにかして身を守るためにイーヴァルディの息子達を勝たせる方法を考えなければなりません。

Literally—if Brokk and Eitri won, Loki would forfeit his head to them. Loki had no choice but to agree, and to save himself had to find a way to make sure the sons of Ivaldi emerged victorious.

塩(運営者)

嘘に嘘を重ねるのが、サスペンスドラマの犯人を見ているみたい

窮地に立たされたロキがとったのは、ブロックとエイトリ兄弟の作業を邪魔して失敗作を作らせる事でした。

[PR]知って得する、知らないと損をする!すぐに役立つ相手に合った「伝え方」のコツ!

嘘つきにはお口チャックの刑

得意の変身術でハエ(蚊?)に変身したロキは、ふいごを担当するブロックにあの手この手で作業の邪魔をします。

ふいごとは、炭などの燃料を高温で燃焼させるために空気を送り込む装置のことで、箱形と蛇腹の物があります。箱形の物はなかのピストンを往復させて風を送り、蛇腹の物は両手で2つの取っ手を持って広げたり縮めたりしながら風を送ります。

刀剣ワールド / 刀鍛冶や鋳物業者によるふいご祭りより

どこかから飛んできたハエに、手を刺されても、首を噛まれても動じることなく作業を続けていたブロックですが、最後の贈り物を作っていた時にまぶたを思いっきり噛まれると一瞬だけ作業の手を止めてしまいます。これが原因となり、最後の贈り物だけ不十分な出来になってしまいました。

元の姿に戻ったロキは、ブロックとエイトリ兄弟の失敗を大喜びします。そして、何食わぬ顔をして落ち込む彼らに付き添い、神々に贈り物を贈呈するのを手伝いました。彼らが最後に作っていたのは「ミョルニル」と呼ばれるハンマーで、トールへの贈り物でした。

ミョルニルの柄は明らかに短く、ロキは明らかな欠陥だと思いほくそ笑みました。しかしその時、ブロックがハンマーが持つ力を披露したのです。ミョルニルは決して砕け散ることがなく、投げれば的を外さず、しかも必ずトールの手に戻ってくるというものです。

短い柄にも関わらず、全ての神がこれこそ最も素晴らしい贈り物だと賛同しました。

Its handle was too short, and Loki smirked at the obvious defect. But then Brokk revealed its abilities. Mjolnir would never shatter,
never miss its mark and always return to Thor’s hand when thrown.

Despite the short handle, the gods all agreed this was the finest gift of all.

この結果に大いに慌てたのがロキです。すぐさま逃げ出したロキでしたが、すぐにトールに捕まえられてしまいます。しかしロキは、「戦いのルールに自分の頭を落とすことは書かれていない!」と反論し、実際にその通りだったため全員が悔しがりました。

ロキはすぐさまトールの手を振りほどいて逃げようとしましたが、ロキの悪業をすべて見抜いていたブロックが『エイトリ』と呼ばれる千枚通しを手に取ると、ロキが逃げ出す前にエイトリをその唇に突き刺しました。そして、ロキが二度と喋られないように、唇を縫い付けてしまったのです。

[PR]検定試験合格者累計140万人!スマホ対応☆国家資格ほか資格取得ならSMART合格対策講座

まとめ:嘘も方便、そして災い転じて福となす

こうして悪戯好きの神様ロキは、悪だくみが出来なくなりました。

塩(運営者)

いやいや、その前になんで神様が悪巧みするねんて

しかし、この事件で思いがけない副産物が生まれました。ロキの蒔いた嘘の種によって、神々に素晴らしい宝物が授けられたのです。ちなみに、イーヴァルディの凄腕の息子達が作ったのは

  1. シフ→黄金色の髪の毛
  2. オーディン→どんな物でも突き通すことのできる矛
  3. フレイ→広げると巨大な船になる小さな生地

そして、ブロックはエイトリが作ったのが

  1. フレイ→どんな馬よりも速くフレイの二輪戦車を引くことのできる金色の猪
  2. オーディン→夜が9度訪れるごとに同じものをさらに8個作ることができる黄金の腕輪
  3. トール→ハンマー(ミョルニル)

ロキの偽りが神々に素晴らしい宝物を授け、今でも知られ続けているハンマーをトールに与えることになったのです。

For it was Loki’s deceit that had brought them these fine treasures and given Thor the hammer for which he’s still known today.

こうして神々に最高の品々が送られたことを思うと、神々の世界でも『大いなる力』が働いていることを感じずにはいられません。とはいえ、ちょっとした冗談のつもりでも女性の髪は絶対に切ってはいけませんけれどね。たとえ、それが神様であったとしてもです。

英語全文

Loki the mischief-maker, was writhing uncomfortably in Thor’s iron grip. The previous night, while the rest of the gods slept, he’d snuck up on Thor’s wife Sif and shorn off her beautiful hair. It’d seemed like a funny prank at the time, but now Thor was about to break every bone in his body. Loki had to think of some way to fix what he’d done. Yet who could replace Sif’s matchless hair, golden like a field of summer wheat?

<全文を読む>▼クリック▼

The dwarves! – their legendary smiths could make anything. So Loki rushed to their realm, deep within the mountains of the earth. Even before he arrived, the wily Loki was already scheming how he would get the dwarves to do his bidding. He decided that his best bet was to pit two families against each other. He first visited the masterful sons of Ivaldi. He told them that their rivals, a pair of brothers named Brokk and Eitri, had claimed that they were the best craftsmen in the world and were determined to prove it in a competition. The rules were that each family had to create three gifts for the gods, including, for the Ivaldis, golden hair.

Then Loki visited Brokk and Eitri, and told them the same thing, only now claiming that the sons of Ivaldi had issued the challenge. But Brokk and Eitri couldn’t be fooled so easily, and only agreed to participate if Loki put his own head on the line. Literally—if Brokk and Eitri won, Loki would forfeit his head to them.

Loki had no choice but to agree, and to save himself had to find a way to make sure the sons of Ivaldi emerged victorious. Both sets of dwarves got to work. Eitri set Brokk to man the bellows and told him not to stop for any reason, or the treasures would be ruined. Soon a strange black fly flew into the room. As a piece of pigskin was placed in the forge, the fly stung Brokk’s hand, but he didn’t flinch. Next, while Eitri worked a block of gold, the fly bit Brokk on the neck. The dwarf carried on. Finally, Eitri placed a piece of iron in the furnace. This time the fly landed right on Brokk’s eyelid and bit as hard as it could. And for just a split second, Brokk’s hand left the bellows.

That’s all it took; their final treasure hadn’t stayed in the fire long enough. Loki now reappeared in his normal form, overjoyed by their failure, and accompanied the dwarves to present their treasures to the gods.

First, Loki presented the treasures from the sons of Ivaldi. Their golden hair bound to Sif’s head and continued to grow, leaving her even more radiant than before. Next, for Odin the all-father, a magnificent spear that could pierce through anything. And finally a small cloth that unfolded into a mighty ship built for Freyr, god of the harvest.

Then Brokk presented the treasures made by him and his brother. For Freyr they’d forged a golden-bristled boar who’d pull Freyr’s chariot across the sky faster than any mount. For Odin, a golden arm ring which would make eight more identical rings on every ninth night. And for Thor, a hammer called Mjolnir. Its handle was too short, and Loki smirked at the obvious defect. But then Brokk revealed its abilities. Mjolnir would never shatter, never miss its mark and always return to Thor’s hand when thrown. Despite the short handle, the gods all agreed this was the finest gift of all.

Remembering what was at stake, Loki tried to flee, but Thor reached him first. But before the dwarves could have their due, clever Loki pointed out that they had won the rights to his head, but not his neck, and thus had no right to cut it. All begrudgingly admitted the truth in that, but Brokk would have the last laugh. Taking his brother’s awl, he pierced it through Loki’s lips and sewed his mouth shut, so the trickster god could no longer spread his malicious deceit. Yet the irony was not lost on the gods. For it was Loki’s deceit that had brought them these fine treasures and given Thor the hammer for which he’s still known today.

<閉じる>

いちばん詳しい「北欧神話」がわかる事典 オーディン、フェンリルからカレワラまで
古代北欧に生まれたゲルマン民族の神話と伝承の数々。世界の創造から滅亡までを謳う、神々と英雄たちの織りなす北欧神話の物語を、美麗イラスト60点とともに徹底解説。フィンランド(フィン人)の神話と伝承の集大成、民族叙事詩『カレワラ』も紹介する。

神話の力 
世界中の民族がもつ独自の神話体系には共通の主題や題材も多く、私たちの社会の見えない基盤となっている。神話はなんのために生まれ、私たちに何を語ろうというのか?ジョン・レノン暗殺からスター・ウォーズまでを例に現代人の精神の奥底に潜む神話の影響を明らかにし、綿々たる精神の旅の果てに私たちがどのように生きるべきか、という問いにも答えていく。神話学の巨匠の遺作となった驚異と感動の名著。

本を読む気はないけれど、北欧神話がどんなものか知りたいと思った方は、中田敦彦さんのYouTube大学がオススメです。

\ ほかにも気になるトークが満載! /

マイク
TEDまとめ(1):エキスパートたちが贈る極上のメッセージ ライフハックとしてではなく、英語学習にも極めて有用なのが、著名人が10分程度のプレゼンを行うTEDです。 TED Talksと...