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貧しさと豊かさは心の中にあるもの―ゼウスの神話:人間の品定め(TED)

神殿

ライフハックとしてではなく、英語学習にも極めて有用なのが、著名人が10分程度のプレゼンを行うTEDです。

TED Talksとは、あらゆる分野のエキスパートたちによるプレゼンテーションを無料で視聴できる動画配信サービスのことです。10年ほど前にサービスが開始されてから、政治、心理学、経済、日常生活などの幅広いコンテンツが視聴できることから人気を集めています。

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TEDは4000を超える膨大な数の動画があります。しかし慣れないうちは、動画の探し方や視聴のコツが分かりませんよね。この記事では、数多くのTEDを見てきた管理人(塩@saltandshio)が、心を揺さぶられたトークをあらすじと一緒にご紹介します。

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イーサルト・ギレスピー:ゼウスの神話:人間の品定め

イーサルト・ギレスピー:ゼウスの神話:人間の品定め

暗闇の中 マントを羽織った謎の2人がある山腹の村に現れました。2人は、町中のドアを叩き、食べ物や休む場所を求めました。しかし、何度も断られました。まもなく、残った家はあの小さなかやぶきの家だけになりました。その家の主は見知らぬ2人を助けるのでしょうか、それとも拒絶するのでしょうか。イーサルト・ギレスピーがバウキスとピレーモーンの神話を語ります(約6分)。Iseult Gillespie / The myth of Zeus’ test.

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神話はあらゆるシチュエーションで答えを教えてくれる

ギリシャ神話や古事記や日本書紀など、神話とよばれるものを読んだことはありますか?神話を読んだことがある人ならお気づきと思いますが、神話に出てくる神様や人々はやけに人間くさい神様ばかりです。

それは、神話を通して人がどのような行いをするといかなる報いを受けるのか、ということを伝える道徳の教科書でもあったからです。比較神話学や比較宗教学で知られるジョーゼフ・キャンベルは、それを『千の顔をもつ英雄』のなかでヒーローズ・ジャーニーという理論をもとにして紹介しました。

ジョーゼフ・キャンベル(Joseph Campbell、1904年3月26日 – 1987年10月30日)は、アメリカ合衆国の神話学者。ジョゼフ・キャンベルと表記されることもある。比較神話学や比較宗教学で知られる。

彼の作品は広大で、人間の経験に基づく多面的なものである。彼の人生観は、しばしば「至上の幸福に従え」(Follow your bliss)という一文に要約される。

Wikipediaより

余談ですが、大学でジョーゼフ・キャンベルの授業をうけたジョージ・ルーカスが、キャンベルが言うところのヒーローズ・ジャーニー(英雄伝説)にひどく感銘を受けて、その基本構造を『スター・ウォーズ』に取り入れたのは有名な話です。

ジョーゼフ・キャンベルが晩年にビル・モイヤーズと対談したテレビ番組、『神話の力』は大きな反響を呼んで書籍化までされました。神話が今を生きる私たちになにを教えてくれるのかという疑問に対し、心の教科書として多くの答えを示唆しれているキャンベルの言葉は人々の心を大きく揺さぶり、『千の顔をもつ英雄』と共に今なお多くの人に読まれています。

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ある村に訪れた謎の二人

今回イーサルト・ギレスピーが紹介するのは、ギリシャ神話にある「人間の品定め」というお話です。あらすじを紹介すると、暗闇の中、マントを羽織った謎の二人がある村を訪れます。二人は村中のドアを叩いて食べ物や休む場所を求めましたが、どの人も怪しげな二人を拒んで家に入れてくれません。

さいごに残ったのは、バウキスとピレーモーンという年配の夫婦が住む、粗末な茅葺(かやぶき)の家でした。雷鳴のようなノックをしながら一晩の宿を求める二人組に対し、何か違和感を感じたものの、困った人を放っておけない性分だった夫婦は、二人を家の中に迎え入れます。

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謎の二人を唯一もてなしたある夫婦

実際に、この夫婦はとても人が良い夫婦でした。

若い頃、バウキスとピレーモーンは恋に落ち、結婚し、質素なかやぶきの家に住み着きました。数10年後、彼らの家はまだ建っており、彼らは以前にもまして愛し合っていました。

When they were young, Baucis and Philemon had fallen in love, married, and settled in the humble cottage. Decades later, their home was still standing— and they were more devoted to each other than ever.

家は貧しく、二人で食べていくのもやっとです。しかし二人は野菜がたっぷり入った鍋を小枝を燃やして温めはじめました。ぐらつくテーブルは壊れた粘土を使ってバランスをとり、テーブルの表面はミントを擦って華やかな香りを演出しました。めったに変えない肉をシチューに入れて見知らぬ人をもてなそうとする二人を、あやしげな客人はじっと見つめていました。

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一夜の出来事が村と夫婦の運命を分けた

料理が出来上がるまで、バウキスとピレーモーンは客人と楽しく会話をして、お風呂を提供しました。やがて食卓には、家の中に残されていたわずかな酒と、多くの料理で溢れかえりました。家にある物でなんとか客人をもてなそうしていたバウキスとピレーモーンですが、客人が腹を満たす前に料理が無くなってしまうのではないかと、内心ヒヤヒヤしていました。

しかし、夜が更けてゆき不思議な訪客たちが酒をたらふく飲んでも、お酒の入った土器は乾く様子がありません。その様子を見て、だんだんとバウキスとピレーモーンは怖くなってきました。おそらく二人は神様であると悟った二人は、家を守るために残していたガチョウを供物として捧げようと追いかけ回します。しかし、逃げ回るガチョウを捕まえることが出来ず、クタクタに疲れた二人は神様の怒りを買う覚悟を決めます。

二人の様子を見て、旅人はついにボロ布と人間の仮面を取りました。バウキスとピレーモーンが予想したとおり、怪しげな二人は田舎を旅する貧しい農民ではなく、ゼウスとその子どものヘルメスでした。

神様は老夫婦に、町の他の人たちとは違って2人は真のゼニア、つまり真のおもてなしを見知らぬ者たちに示したと告げました。その試験に合格したのはこの夫婦だけでした。

The gods told the old couple that, unlike the other townspeople, they had shown true xenia, or loving hospitality to strangers. They alone had passed the test.

ゼウスとヘルメスは、自分たちについてきなさいとバウキスとピレーモーンに命じます。ゼウスとヘルメスのあとについて、バウキスとピレーモーンが近くの山まで来たところ、そこで見たのは先程まであった自分たちの村が、濁った沼の中へとのみこまれていく姿でした。

神様を家で休息させることを拒んだ罰として、ゼウスとヘルメスは町の人々を沼の中に投げ入れ、夫婦の家だけを手つかずで残していたのです。二人の神様は自分たちをもてなした礼として、バウキスとピレーモーンの粗末な家を大きな神殿に変え、大理石の柱が立ち並ぶ立派な住まいにします。

しかし、バウキスとピレーモーンは、そんな神様のお礼よりも沼にのみこまれた友人や隣人たちが頭をよぎり、悲しみに包まれあふれる涙を止めることが出来ませんでした。

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まとめ:物語が伝えたいことを考えるのが神話の醍醐味

心優しいバウキスとピレーモーンを、二人の神様は褒めたたえます。そして、何か希望はないかと優しく尋ねました。バウキスとピレーモーンは短い話し合いをした後、新しく作られた神殿の世話をすることと、時が来たら二人で一緒に死にたいと願い出ました。その後、バウキスとピレーモーンの二人は、神殿とお互いの世話をしながら長い年月を過ごします。そして、ついに二人はこの世に別れを告げる時がきます。

2人は抱き合いその場に根を下ろしました。2人の足には蔓が巻きつき、頭上には林冠が繁りました2人は愛情を込めて。人間としての最後の別れを告げました。そして、バウキスとピレーモーンが立っていた場所には、年月とともに曲がりながらもシナノキと樫の木がそびえ立ち、その枝は永遠に絡み合っていました。

They embraced, becoming rooted in place. Vines wound around their legs and canopies flourished overhead. They bid each other a loving, last farewell as humans. And where Baucis and Philemon had just stood, bent with age, there towered a linden and an oak tree, their branches intertwined for eternity.

物語なら、ここで「めでたしめでたし」で終わりです。ですが、ここからもう一歩、足を踏み出して研究を重ねたのがたのがジョーゼフ・キャンベルです。ジョーゼフ・キャンベルは、そうすることで何気ない物語がより深みを増し、もし自分が道に迷った時にはなにかの助け(救い)になると『神話の力』で述べていました。

残念ながらこのお話に対する見解は『神話の力』では述べられていません。この話は互いを思いやり、困っている人を放っておけない心優しい人は、大きな救いと困難な中でも幸せな生涯を過ごせるというのを伝えようとしているのかもしれません。

不思議なことに選ばれた人が残されて村が水没してしまうという話は、日本に限らず世界各国の神話に残されています。そこに考えが至ると、神話がまた違った形で私たちの前に存在感をあらわすようになると思いませんか?神話には様々な解釈があります。どれが間違いで正解なのかは問題ではありません。

それぞれの物語が、私たちに何を伝えようとしているのか。それを考える想像力のほうが大切なのですから。

英語全文

It was dark when two mysterious, shrouded figures appeared in the hillside village. The strangers knocked on every door in town, asking for food and shelter. But, again and again, they were turned away. Soon, there was just one door left: that of a small, thatched shack.

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An elderly couple, Baucis and Philemon, answered the thunderous knock. Although there was something off about these visitors, it was in the pair’s nature to care for those in need. Philemon invited them to rest, and the cottage flooded with warmth as Baucis teased the fire back to life.

When they were young, Baucis and Philemon had fallen in love, married, and settled in the humble cottage. Decades later, their home was still standing— and they were more devoted to each other than ever.

The strangers watched intently as Baucis nestled twigs under a battered pot filled with vegetables. The couple could rarely afford meat, but in honor of their guests, Philemon cut strips from an aging shank for the stew. They made cheerful conversation and offered their visitors hot baths. Baucis used a chip of broken clay to balance the wobbly table’s legs and rubbed its surface with mint until it smelled sweet and fresh. Weaving around each other with care, the couple transformed what they had into a feast. Soon, the tabletop overflowed with food and the last of their sweet wine.

Privately, Baucis and Philemon worried that their provisions would run out. Yet, as the night wore on, and their strange guests took hearty gulps of wine, the clay vessel never ran dry. The couple, at first relieved, grew terrified. Their guests weren’t humble peasants traveling the countryside. They were almost certainly gods in disguise— but which gods, they didn’t know.

Panicked that their preparations were inadequate, Baucis and Philemon searched for another offering. The only precious thing left was the goose that guarded their home. The couple repeatedly lunged after the bird, but they were too worn out for the chase. So, they prepared to receive the wrath of the gods.

Their guests rose up, shedding their rags and mortal masks. Looming before them was Zeus, the storm-brewing ruler of the gods, and his son, Hermes, the fleet-footed messenger who shepherded mortals to the underworld. The gods told the old couple that, unlike the other townspeople, they had shown true xenia, or loving hospitality to strangers. They alone had passed the test.

The gods commanded the couple to follow them, and the group ascended the nearest mountain. Nearing the summit, Baucis and Philemon looked back— but were shocked to see a murky swamp where their village stood just moments before. As punishment for refusing to shelter the gods, Zeus and Hermes had cast the townspeople underwater, leaving only their hosts’ home intact, Recalling their friends and neighbors, Baucis and Philemon couldn’t hide their terror and mournful tears, even as their house transformed below. It grew larger and sprouted marble pillars and steps. Legends etched themselves onto its grand doors. Their rickety cottage had metamorphosed into a gleaming temple for the gods.

Hermes commended the couple and gently asked if there was anything they desired. After a brief discussion, Philemon requested that he and Baucis be permitted to care for the new temple. And he asked if, when their time came, they could die together, so neither would have to face life without the other.

Tending to the temple and one another, they lived many more years. Until, one day, Baucis noticed leaves fluttering from her husband’s hands and looked down to find her own skin hardening. They embraced, becoming rooted in place. Vines wound around their legs and canopies flourished overhead. They bid each other a loving, last farewell as humans. And where Baucis and Philemon had just stood, bent with age, there towered a linden and an oak tree, their branches intertwined for eternity.

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神話の力 / 世界中の民族がもつ独自の神話体系には共通の主題や題材も多く、私たちの社会の見えない基盤となっている。神話はなんのために生まれ、私たちに何を語ろうというのか?ジョン・レノン暗殺からスター・ウォーズまでを例に現代人の精神の奥底に潜む神話の影響を明らかにし、綿々たる精神の旅の果てに私たちがどのように生きるべきか、という問いにも答えていく。神話学の巨匠の遺作となった驚異と感動の名著。

千の顔をもつ英雄 / 世界最古の英雄譚といわれるギルガメシュの冒険からオデュッセウスの苦難の旅、ブッダの修行、イザナギとイザナミの物語まで、古今東西の神話や民話に登場する「英雄」たちの冒険を比較すると、心を揺さぶる物語の基本構造が見えてくる―ー。ジョージ・ルーカスに“スター・ウォーズ”創造のインスピレーションを与えるなど、世界中のクリエイターたちに多大な影響を与えた神話学者キャンベルによる古典的名著の新訳版。

マンガ 面白いほどよくわかる!ギリシャ神話
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