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馭者(ぎょしゃ)座にまつわる物語―太陽神の息子の悲劇的な神話(TED)

太陽

ライフハックとしてではなく、英語学習にも極めて有用なのが、著名人が10分程度のプレゼンを行うTEDです。

TED Talksとは、あらゆる分野のエキスパートたちによるプレゼンテーションを無料で視聴できる動画配信サービスのことです。10年ほど前にサービスが開始されてから、政治、心理学、経済、日常生活などの幅広いコンテンツが視聴できることから人気を集めています。

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TEDは4000を超える膨大な数の動画があります。しかし慣れないうちは、動画の探し方や視聴のコツが分かりませんよね。この記事では、数多くのTEDを見てきた管理人(塩@saltandshio)が、心を揺さぶられたトークをあらすじと一緒にご紹介します。

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イーサルト・ギレスピー:太陽神の息子の悲劇的な神話

イーサルト・ギレスピー:太陽神の息子の悲劇的な神話

毎朝、ヘーリオスは黄金の戦車を放ち、天空を駆け巡っていました。 太陽神は夜明けを昼に変えながら、下界にいる息子のフェートンのことを思っていました。へ―リオスはフェートンに自分が本当の父親であることを証明するために、彼の望むものを何でも与えることにしました。しかし、ファエトンが望んだのは、一日だけヘーリオスの戦車を操縦することだったのです。イーサルト・ギレスピーが戦車を操る者の悲劇的な神話を語ります(約5分)。Iseult Gillespie / The tragic myth of the Sun God’s son.

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浮気性の神様、太陽神ヘーリオス

ギリシャ神話での太陽神といえばアポロンが有名ですが、 古代期では太陽神といえばヘーリオス(ヘリオス)とされていました。しかし、BC4世紀頃からアポロン神と同一視されはじめ、ローマ期(西暦紀元頃)には完全にアポロン(ローマ名「アポロ」)に統合されたそうです。

ちなみに、ギリシャ語では太陽のことはヘリオス(Helios,Ήλιος)と呼ばれ、ヘーリオスの名残がいまでも残っています。今回のおはなしは、そのヘーリオスと息子のフェートンにまつわるギリシャ神話です。

毎朝、ヘーリオスは翼のある馬に馬具を付け、黄金の戦車を放ち、天空を駆け巡っていました。太陽神はバラ色の夜明けを黄金の花のような昼に変えながら、はるか下にいる人々のことを思っていました。

Every morning, Helios harnessed his winged horses, unleashed his golden chariot, and set out across the sky. As the Sun God transformed the rosy dawn into the golden blooms of day, he thought of those far below.

なんでヘーリオスは毎朝の日課を、そんなロマンティックかつセンチメンタルに行っていたのでしょうか。これにはちゃんとした(?)ワケがあります。じつは、ヘーリオスは性格に問題があり、根っからの浮気性だったのです。

塩(運営者)

ヘーリオスに限らず、ギリシャ神話に出てくる神様はわりと浮気性ですけれどね

水の妖精クリュメネーと恋に落ちて、7人の娘とフェートンという息子が1人いたヘーリオスでしたが、その性格が災いしてクリュメネーは愛想を尽かして子供と一緒に地上に降りてしまったのです。クリュメネーはその後、エチオピアのメロプス王と結婚しましたが、幼かった息子のフェートンには「おまえの本当の父親は太陽神ヘーリオスである」と言い聞かせていました。

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息子のフェートンは小心者

青年になったフェートンは、自分が太陽神の子供であることに特別な誇りを持つようになりました。

しかし、ある日フェートンの同輩で自身もゼウスの息子であるエパフォスが、フェートンの傲慢さをいさめようと「ヘーリオスは所詮お前の父でない」と揶揄しました。確固たる反証がないため、その可能性はフェートンにとって気がかりとなりました。

However, one day, Epaphus, Phaethon’s peer who was himself the son of Zeus, sought to temper Phaethon’s arrogance, taunting that Helios wasn’t his father after all. With no absolute proof to the contrary, the possibility bore into Phaethon’s mind.

「特別な誇り」「傲慢」という言葉が出てきた時点でフェートンの小物さがうかがえますね。さらにフェートンは、あれほど「父親は太陽神ヘーリオスである」と言っていた母親にまで疑いを持ち、自分は嘘をつかれているのではないかと疑心暗鬼になります。

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父親探しの旅に出るフェートン

疑念が拭えず、何度もクリュメネーに「自分の本当の父親は誰なんですか?」と聞き続けたフェートンは、「だったら自分で確かめてこいや(怒←※あくまで比喩です)」とヘーリオスのもとへと送り出してしまいます。

比較神話学や比較宗教学で知られるジョーゼフ・キャンベルは、『千の顔をもつ英雄』や『神話の力』のなかで、「神話に出てくるヒーロー(英雄)たちはみんな、父親探しの旅に出る」というセオリーを紹介していますが、フェートンもまたそのセオリーに則った行動を起こしているといえます。

東へ歩き続けたフェートンは、ついにきらびやかに輝く太陽神の宮殿に入りました。明るさに目が慣れてくると、ヘーリオスの晴れやかな笑顔と、彼を迎え入れる両手が見えました。フェートンがヘーリオスは本当に自分の父かと疑いを見せると、太陽神はただ微笑みました。

Walking eastward, Phaethon entered the Sun God’s gleaming palace at last. Once his eyes adjusted to the brightness, he saw Helios’ radiant smile and open arms. When Phaethon expressed his skepticism that Helios was truly his father, the Sun God only beamed.

なぜ、ヘーリオスがフェートンに「そのとおり」と言ってあげなかったのか、それはわかりません。言葉で示すかわりに、ヘーリオスは「おまえの望むものをなんでも与えよう」とフェートンに伝えて疑惑を拭い去ろうとしました。

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父との再会、そして悲劇は起きた

ヘーリオスの光を浴びながら、フェートンは父との親子関係を世の中に、そして自分自身に示す方法がひとつだけあると思いました。

塩(運営者)

「世の中に示したい」というあたり、フェートンは虚栄心の塊であるのが伝わりますね

フェートンはヘーリオスに、「あなたの戦車を一日貸してほしい」とお願いします。その言葉にヘーリオスの表情が曇ります。なぜなら、ヘーリオスが毎日天空を駆けていた戦車には火を噴く馬が繋がれており、天馬は常にトップスピードで走るため操縦が大変に難しく、最高神ゼウスですら操作に自信がないほど、巧みな操縦技術が求められるものだったからです。

ヘーリオスは何度も「考え直してほしい」と懇願しますが、フェートンは頑として受け付けません。そのため、ついにヘーリオスは息子を説得するのを諦めてフェートンに旅の支度をさせます。

しかし、これが悲劇のはじまりでした。

練習もなしに乗ったフェートンが天馬を扱いきれるわけもなく、天馬は慣れない操作に暴れまわります。天馬が地球から離れれば地上の海は凍り付き、逆に地球に近付けば水は干上がって砂漠へと変わり果て、その様子を見たオリンポス山の神々はパニックに陥ります。

ゼウスは、フェートンがこのまま墜落すれば地球が燃えてしまうと思いました。そこで、彼の強力な雷を一発、少年に浴びせました。馬から引き離され、フェートンは一瞬だけ天空に浮かぶと地上のエリダヌス川に落ちていき、二度と浮かび上がりませんでした。

Zeus saw that Phaethon was destined for a crash that would set the Earth ablaze. So, he hurled one of his mighty thunderbolts at the boy. The horses tore away, leaving Phaethon suspended in the heavens for just one moment, before he plummeted to the Earth, into the river Eridanus, never to resurface.

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まとめ:親の子を思う気持ちは天よりも高く

フェートンの姉たちは川岸に集まると、弟の悲劇的な最後を嘆きました。ゼウスは地球を修復し、不朽の記念碑を建て、星々にフェートンの肖像を散りばめました。ヘーリオスは息子を失った悲しみに打ちひしがれ、空から身を隠してしまいました。

しかし、すぐにヘーリオスは気持ちを立て直して表舞台に戻ってきます。それ以降、ヘーリオスは息子を失う原因となった戦車に乗ると、毎日天国を駆けながら息子に会いに行くようになりました。

この星座は「馭者座(ぎょしゃざ)」として知られ、自分を見失った青年と、自分よりはるかに大きな力を利用しようとした彼の姿の思い出として、鎮座しています。

The constellation, known as “Auriga,” or “the charioteer,” stands as a reminder of a lost young man, and his bid to harness powers far greater than himself.

大いなる力には大いなる責任が伴う、という言葉があります。神話を昔ばなしとしておわりにするのではなく、この物語を語ることによって私たちになにを伝えようとしているのかを考えてみませんか。そうすれば、物語の奥にある深い叡智に触れられるようになるでしょう。

英語全文

Every morning, Helios harnessed his winged horses, unleashed his golden chariot, and set out across the sky. As the Sun God transformed the rosy dawn into the golden blooms of day, he thought of those far below.

<全文を読む>▼クリック▼

Years ago, he fell in love with a water nymph named Clymene. Together, they had seven daughters and one son named Phaethon. But Helios had a wandering eye. Clymene eventually left him, taking their children with her and marrying King Merops of Ethiopia. When Phaethon was little, Clymene told him tales of his divine father. As he grew into a young man, he took a special pride in knowing he was the Sun God’s child. However, one day, Epaphus, Phaethon’s peer who was himself the son of Zeus, sought to temper Phaethon’s arrogance, taunting that Helios wasn’t his father after all. With no absolute proof to the contrary, the possibility bore into Phaethon’s mind. He feared that his mother had lied. And who was he if not Helios’ son? When Phaethon confronted Clymene, she insisted that his father was the powerful Sun God. Nevertheless, Phaethon was seized by doubt. So, Clymene sent him off to ask Helios directly.

Walking eastward, Phaethon entered the Sun God’s gleaming palace at last. Once his eyes adjusted to the brightness, he saw Helios’ radiant smile and open arms. When Phaethon expressed his skepticism that Helios was truly his father, the Sun God only beamed. To dispel all doubt, he would grant Phaethon anything he wanted. Basking in Helios’ glow, Phaethon felt there was but one way to prove their connection to the world— and himself. He needed to drive Helios’ chariot for a day.

The Sun God’s smile dimmed. In his daily journey, he steered his fire-breathing horses through space at top speeds. The task required masterful control to ensure that the chariot raced along its precise celestial trajectory, with a thin margin separating stability from catastrophe. Even Zeus wasn’t confident in driving his chariot. Helios begged his son to reconsider, but Phaethon was steadfast, so the god prepared him for the journey.

With a crack of the reins, he was off. In flight, Phaethon’s mortal insecurities fell away. But soon, the reins slackened in his hands. Unaccustomed to the feathery weight of a mortal, the radiant horses climbed higher and higher. The chariot whirled past constellations, narrowly missing the pincers of Scorpio and the arrow of Sagittarius.

With the Sun so far away, the Earth darkened, and the seas began to crackle and freeze. Startled, Phaethon sharply pulled the reins. The horses lurched and the chariot plunged towards the Earth’s surface. Lakes boiled and forests burned as Phaethon struggled to pull the chariot up, leaving deserts in his wake.

Back on Mount Olympus, the Gods were panicking. Zeus saw that Phaethon was destined for a crash that would set the Earth ablaze. So, he hurled one of his mighty thunderbolts at the boy. The horses tore away, leaving Phaethon suspended in the heavens for just one moment, before he plummeted to the Earth, into the river Eridanus, never to resurface.

Phaethon’s sisters gathered on the riverbank to weep, gradually metamorphosing into poplar trees that leaked precious amber into the water. Zeus repaired the Earth and created an everlasting memorial, strewing Phaethon’s likeness in the stars.

Overcome by grief, Helios had hidden himself from the sky. But he soon returned, and every day from then on, as he raced through the heavens, he greeted his son. The constellation, known as “Auriga,” or “the charioteer,” stands as a reminder of a lost young man, and his bid to harness powers far greater than himself.

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マンガ 面白いほどよくわかる!ギリシャ神話
ゼウスの誕生から、オリュンポス12神それぞれの逸話、英雄の活躍、トロイア戦争やオイディプスの有名悲劇まで、ストーリー、ドラマをしっかり描いていていて、読み応えたっぷり!そのほか、星座や芸術など、現代にも息づくギリシャ神話との関連や、神々のプロフィールもわかりやすく紹介した充実の内容です。

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世界中の民族がもつ独自の神話体系には共通の主題や題材も多く、私たちの社会の見えない基盤となっている。神話はなんのために生まれ、私たちに何を語ろうというのか?ジョン・レノン暗殺からスター・ウォーズまでを例に現代人の精神の奥底に潜む神話の影響を明らかにし、綿々たる精神の旅の果てに私たちがどのように生きるべきか、という問いにも答えていく。神話学の巨匠の遺作となった驚異と感動の名著。

本を読む気はないけれど、ギリシャ神話がどんなものか知りたいと思った方は、中田敦彦さんのYouTube大学がオススメです。

【ギリシャ神話①】古代の神々の物語!

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