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転んでもただでは起きない最恐の男―シーシュポスの神話(TED)

王様

ライフハックとしてではなく、英語学習にも極めて有用なのが、著名人が10分程度のプレゼンを行うTEDです。

TED Talksとは、あらゆる分野のエキスパートたちによるプレゼンテーションを無料で視聴できる動画配信サービスのことです。10年ほど前にサービスが開始されてから、政治、心理学、経済、日常生活などの幅広いコンテンツが視聴できることから人気を集めています。

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TEDは4000を超える膨大な数の動画があります。しかし慣れないうちは、動画の探し方や視聴のコツが分かりませんよね。この記事では、数多くのTEDを見てきた管理人(塩@saltandshio)が、心を揺さぶられたトークをあらすじと一緒にご紹介します。

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アレックス・ジェンドラー:シーシュポスの神話

アレックス・ジェンドラー:シーシュポスの神話

シーシュポスは賢い君主であり彼の都市を繁栄させましたが、よこしまな暴君でもあり、姪を誘惑したり、権威を見せつけるため訪問客を殺したりしました。彼の訪問客に対する神聖なもてなしの伝統に対する冒涜は神々を激怒させましたが、それはシーシュポスの破滅 ― ゼウスから終身刑を言い渡される無謀な自信でした。アレックス・ジェンドラーがシーシュポスの神話について語ります(約4分半)。Alex Gendler / The myth of Sisyphus.

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神をも恐れぬ男

ギリシャ神話には、神々を怒らせた人々が恐ろしい目にあう物語がたくさんあります。しかし神様を怒らせたといっても、「それは神様側の嫉妬では?」「神様、完全に八つ当たりしているよね」「神様なのに器が小さい!」とツッコミを入れたくなる話も多くあります。そのように、やけに人間くさい神様が多いのも、ギリシャ神話ならではの面白さといえます。

ギリシャ神話とは、Wikipediaによると古代ギリシアより語り伝えられる伝承文化で、多くの神々が登場し、人間のように愛憎劇を繰り広げる物語とされています。今日、ギリシア神話として知られる神々と英雄たちの物語の始まりは、およそ紀元前15世紀頃に遡ると考えられ、草創期においては口承形式で伝えられてきました。後に文字記録として残されていますが、地域ごとに食い違いやちがいがあり、いまだに系譜ごとに渾然として混ざり合っています。

星占いに出てくる星座や、夜空に浮かぶ星座のほとんどはギリシャ神話と関係のあるもので、わたしたちの生活に知らず知らずのうちに密着しているのがギリシャ神話といえるでしょう。

今回の物語の主人公であるシーシュポスは、「それは神様だって怒るわ」と納得してしまうほどの完全な悪人です。

シーシュポスは、現在ではコリントとして知られているエピュラの初代の王です。都市を繁栄させた賢い王でしたが、よこしまな暴君でもあり、姪を誘惑したり、権威を見せつけるために訪問客を殺したりしました。

Sisyphus was the first king of Ephyra, now known as Corinth. Although a clever ruler who made his city prosperous, he was also a devious tyrant who seduced his niece and killed visitors to show off his power.

いつの時代も、訪問客をもてなすことは神聖なものとされています。それを自分の権威を見せびらかすために穢したシーシュポスの行いは、大いに神々の怒りを買いました。

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神をも騙す男

しかし、神々の怒りを買う発端となったのは、シーシュポスが訪問客へのもてなしを穢したことではありません。シーシュポスは確かに暴君でしたが、トラブルの種をまいたのはギリシア神話の主神たる全知全能の存在であるゼウスが、妖精のアエギナを大きな鷲の姿に変えて誘拐したことです。

アエギナの父である川の神のアイソープスは、娘のアエギナが連れ去れるのを見てエピュラ(別名:コリントス)まで後を追いかけましたが、そこでゼウスの姿を見失ってしまいました。そこにたまたまいたのがシーシュポスでした。

シーシュポスは、ゼウスがアエギナをどこに連れて行ったか教える代わりに、アイソープスの力で町に泉を作ってほしいとお願いします。アイソープスが泉を作ると、シーシュポスはゼウスがアエギナはオイノーネー島に連れ去られたと教えます。これを聞いて怒ったのがゼウスです。

塩(運営者)

いやいや、あんた奥さんいるやん。そもそもアエギナ連れ去ったのが原因やん…

余談ですが、ゼウスの妻はヘラというギリシア神話に登場する最高位の女神です。ゼウスの姉でもある彼女は、結婚と母性、貞節を司っており、非常に嫉妬深い性格でも知られています。

ゼウスは、雷を投げつけてアーソーポスを追い払ったあと、死の神タナトスにシーシュポスを鎖で冥界に縛って、今後は問題を起こさせないように指示をします。このトークでは語られていませんが、そもそもの問題が神様側にあるというのも、ギリシャ神話の面白いところです。そうして、シーシュポスはゼウスからの指示を受けたタナトスに捕まってしまいます。

しかしシーシュポスは悪名高きずる賢さで生きのびました。まさに収監されようとする時、王は鎖の仕組みを見せて欲しいと頼むと ― 代わりにタナトスをさっと縛り上げ娑婆へと逃げていきました。

But Sisyphus lived up to his crafty reputation. As he was about to be imprisoned, the king asked Thanatos to show him how the chains worked – and quickly bound him instead, before escaping back among the living.

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神をも呆れさせる男

シーシュポスを鎖でつなぐはずが、逆にタナトスが鎖で縛りあげられてしまったため、世界は大混乱に陥ります。なぜなら、冥界の王タナトスが捕まってしまい死を裁くことが出来なくなったため、誰も死ぬことが出来なくなってしまったのです。

世界が元に戻ったのは、戦争の神アレスが戦いがもはや楽しいものではないと腹を立てタナトスの鎖を解いてやった時です。

Things only returned to normal when the god of war Ares, upset that battles were no longer fun, freed Thanatos from his chains.

ここでも、ギリシャ神話らしい注目すべき点があります。

塩(運営者)

戦いが楽しかったら、アレスはタナトスの鎖を永遠に切らなかっただろうなぁ

タナトスから逃げ切ったシーシュポスでしたが、「ずっと逃げ切れるわけがない」とひそかに覚悟を決めていました。とはいえ、ここでもただでは起きないのがシーシュポスのすごさです。死ぬ前にシーシュポスは、妻に自分の遺体をスチュクス川(三途の川)の川岸に流れ着かせるように頼むのです。これにはある作戦がありました。

スチュクス川に流れ着いて再び冥界を訪れたシーシュポスは、冥界の女王ペルセフォネに近寄ります。そこでなんと、ペルセフォネに「妻が自分をまともに埋葬してくれなかった」と愚痴をこぼすのです。さらに、「自分を省みない妻に復讐するために三日間だけ生き返らせてほしい」と頼み込み、まんまとシーシュポスは地上に戻ってくるのです。

もちろん、三日経ってもシーシュポスは冥界に戻りませんでした

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自然のサイクルまで作ってしまった男

一度ならず二度までも神様を騙したシーシュポスでしたが、ついにゼウスの使いであるヘルメスに捕まります。そうして、ついにシーシュポスはゼウスから『巨大な岩を丘の上に押しあげる』という裁きを受けます。

けれども頂上に近づくたびにその岩が転がり落ちて、また最初からやり直さなければならないのです。何度も何度も永遠に……

歴史家たちはシーシュポスの物語は、日の出と日の入り、その他自然のサイクルに関する古代の神話に由来する可能性があると示唆しています。

But just as he approached the top, the rock would roll all the way back down, forcing him to start over …and over, and over, for all eternity.

Historians have suggested that the tale of Sisyphus may stem from ancient myths about the rising and setting sun, or other natural cycles.

この話が語源となって、「果てしなくてむだな」という意味の「シーシュポスの岩(英:the stone of Sisyphus)」「Sisyphean labor」という熟語が出来ました。

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まとめ:繰り返しの毎日に価値を持たせるのは自分次第

果てしない絶望で救いのない話に思えるシーシュポスの神話ですが、この話に別の側面を持たせた作家がいました。実存主義哲学者で小説家、劇作家、哲学者、随筆家、記者としても知られているアルベール・カミュ(1913年11月7日 – 1960年1月4日)です。

実存主義哲学者のアルベール・カミュは、彼の定評ある随筆『シーシュポスの神話』の中で、刑罰を無意味で無関心な宇宙にいながら、意味と真実を求めようとする人間の無駄な探求になぞらえました。

In his classic essay The Myth of Sisyphus, existentialist philosopher Albert Camus compared the punishment to humanity’s futile search for meaning and truth in a meaningless and indifferent universe.

カミュはこの本の中で、人は皆いずれは死んで全ては水泡(無)に帰す事を承知しているにも拘わらず、それでも生き続ける人間の姿を、そして人類全体の運命を描き出しました。

しかしながらカミュは、もし私たちの日々の努力が時には同じように、繰り返しばかりでばかばかしいように思えても、それらを自分達のものとして受け入れることで重要性と価値をもたせることができるとも述べています。

仕事、勉強、家事、育児……毎日が似たような日々でつまらないと言うのは簡単です。しかし、そこに少しでも意味を見出し価値あるものにしようと思うだけで、あたりまえの日常の景色が違って見えてくるかもしれません。

英語全文

Whether it’s being chained to a burning wheel, turned into a spider, or having an eagle eat one’s liver, Greek mythology is filled with stories of the gods inflicting gruesome horrors on mortals who angered them. Yet one of their most famous punishments is not remembered for its outrageous cruelty, but for its disturbing familiarity.

<全文を読む>▼クリック▼

Sisyphus was the first king of Ephyra, now known as Corinth. Although a clever ruler who made his city prosperous, he was also a devious tyrant who seduced his niece and killed visitors to show off his power. This violation of the sacred hospitality tradition greatly angered the gods. But Sisyphus may still have avoided punishment if it hadn’t been for his reckless confidence.

The trouble began when Zeus kidnapped the nymph Aegina, carrying her away in the form of a massive eagle. Aegina’s father, the river god Asopus, pursued their trail to Ephyra, where he encountered Sisyphus. In exchange for the god making a spring inside the city, the king told Asopus which way Zeus had taken the girl. When Zeus found out, he was so furious that he ordered Thanatos, or Death, to chain Sisyphus in the underworld so he couldn’t cause any more problems.

But Sisyphus lived up to his crafty reputation. As he was about to be imprisoned, the king asked Thanatos to show him how the chains worked – and quickly bound him instead, before escaping back among the living. With Thanatos trapped, no one could die, and the world was thrown into chaos. Things only returned to normal when the god of war Ares, upset that battles were no longer fun, freed Thanatos from his chains.

Sisyphus knew his reckoning was at hand. But he had another trick up his sleeve. Before dying, he asked his wife Merope to throw his body in the public square, from where it eventually washed up on the shores of the river Styx. Now back among the dead, Sisyphus approached Persephone, queen of the Underworld, and complained that his wife had disrespected him by not giving him a proper burial. Persephone granted him permission to go back to the land of living and punish Merope, on the condition that he would return when he was done. Of course, Sisyphus refused to keep his promise, now having twice escaped death by tricking the gods.

There wouldn’t be a third time, as the messenger Hermes dragged Sisyphus back to Hades. The king had thought he was more clever than the gods, but Zeus would have the last laugh. Sisyphus’s punishment was a straightforward task – rolling a massive boulder up a hill. But just as he approached the top, the rock would roll all the way back down, forcing him to start over …and over, and over, for all eternity.

Historians have suggested that the tale of Sisyphus may stem from ancient myths about the rising and setting sun, or other natural cycles. But the vivid image of someone condemned to endlessly repeat a futile task has resonated as an allegory about the human condition. In his classic essay The Myth of Sisyphus, existentialist philosopher Albert Camus compared the punishment to humanity’s futile search for meaning and truth in a meaningless and indifferent universe. Instead of despairing, Camus imagined Sisyphus defiantly meeting his fate as he walks down the hill to begin rolling the rock again. And even if the daily struggles of our lives sometimes seem equally repetitive and absurd, we still give them significance and value by embracing them as our own.

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シーシュポスの神話
神々がシーシュポスに科した刑罰は大岩を山頂に押しあげる仕事だった。このギリシア神話をもとに、その根本思想である“不条理の哲学”を理論的に展開追究した一冊。

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