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サンポをめぐるフィンランド神話 ― 尽きぬ富と強欲の源(TED)

海

ライフハックとしてではなく、英語学習にも極めて有用なのが、著名人が10分程度のプレゼンを行うTEDです。

TED Talksとは、あらゆる分野のエキスパートたちによるプレゼンテーションを無料で視聴できる動画配信サービスのことです。10年ほど前にサービスが開始されてから、政治、心理学、経済、日常生活などの幅広いコンテンツが視聴できることから人気を集めています。

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TEDは4000を超える膨大な数の動画があります。しかし慣れないうちは、動画の探し方や視聴のコツが分かりませんよね。この記事では、数多くのTEDを見てきた管理人(塩@saltandshio)が、心を揺さぶられたトークをあらすじと一緒にご紹介します。

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ハンナ=イロナ・ハルマヴァーラ:サンポをめぐるフィンランド神話 ― 尽きぬ富と強欲の源

ハンナ=イロナ・ハルマヴァーラ:サンポをめぐるフィンランド神話 ― 尽きぬ富と強欲の源

海上で激しい攻撃を受け、8日間波に打たれた後、屈強な詩人であり、この世と同じほどの年を重ねた賢者ワイナミョイネンは、遠くの地ポホヨラの海岸に流れ着きました。ずる賢いロウヒはワイナミョイネンを看病しましたが、故郷の地へと帰す見返りとして報酬を要求しました。金銀では満足せず、魔女はまだこの世に存在しないものを要求しました。ハンナ=イロナ・ハルマヴァーラはフィンランド神話を掘り下げます(約5分)。Hanna-Ilona Harmavaara / The myth of the Sampo— an infinite source of fortune and greed.

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フィンランド神話とは

古事記や日本書紀、ギリシャ神話はご存知の方が多いと思いますが、フィンランド神話を知っている人は少ないのではないでしょうか。Wikipediaによれば、フィンランド神話は(あたりまえですが)フィンランドの神話であり、18世紀まで口伝によって継承されてきた神話であると紹介しています。

フィンランド神話の中では、この世界は鳥の卵が破裂してできあがったものであり、また空は卵の殻かテントのようで、北にある北極星まで届く大きな柱がそれを支えているのだと考えられていました。

星の動きは、北極星を中心に空の大きなドームが回転する事で起こると説明付けられており、地球の端には “Lintukoto” (鳥の住処)と呼ばれる暖かい地域があり、冬の間鳥が住んでおり、天の川は “Linnunrata” (鳥の通り道)と呼ばれ、鳥は季節によってフィンランドとLintukotoの間を行ったり来たりすると信じられていました。フィンランドでは今でも、天の川の事をLinnunrataと呼んでいる。

フィンランド神話と鳥は切っても切り離せないほど密接な関係性を持ち、人が産まれる瞬間、その魂は鳥が運んできて、そして死の瞬間に運び去るとされていました。また、枕元に木製の鳥の像(Sielulintu)を置いておくことで、夢の中で魂が道に迷って帰って来られなくなる事を防いでいました。このように、鳥は古代人の重要な信仰の対象だった事がうかがえます。

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偉大なる賢者ワイナミョイネンの数奇な物語

今回の物語は、「サンポをめぐるフィンランド神話」です。屈強な詩人で、この世と同じほど年を重ねた賢者ワイナミョイネンは、海上で激しい攻撃を受けたあと8日間の漂流の果てに、遠くの地ポホヨラの海岸にたどり着きました。

ポポヨラはワイナミョイネンの故郷であるカレワラと違って、暗く氷で覆われた土地で、「すきっ歯の北の魔女」 ロウヒによって支配されていました。

ずる賢いロウヒはワイナミョイネンを看病しましたが、故郷の地へと帰す見返りとして報酬を要求しました。金銀では満足せずに、まだこの世に存在していない「サンポ」を要求したのです。

The cunning witch nursed Väinämöinen back to health but demanded a reward for returning him home. Not content with mere gold or silver, Louhi wanted what did not yet exist— the Sampo.

それを聞いた賢者ワイナミョイネンは困ってしまいます。なぜなら、サンポは天空を創った「永遠の鍛冶屋」と呼ばれるセッポ・イルマリネンしか作れないことを知っていたからです。

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「すきっ歯の北の魔女」 ロウヒが求めたサンポとは

サンポ(Sampo あるいはサンマス Sammas)とは、フィンランド神話に出てくる、持つ者に幸福をもたらす神秘的な人工物です。しかし、それが何であるかは誰も知りません。フィンランド叙事詩『カレワラ』の中で、サンポは非常に重要な要素としてされていますが、そもそもフィンランド神話は口伝で伝えられているため、その形状や働きは物語によって様々です。

フィンランド語学者であり、フィンランドの民間説話の収集家であるエリアス・リョンロート(1802年4月9日 – 1884年3月19日)によると、サンポは何もない所から小麦粉と塩と金を作る機械であったとされています。一方で、サンポは世界を支える柱(もしくは木)とされたり、コンパスやアストロラーベ(古代の天体観測機)、宝物の入ったチェスト、コンスタンチノープルからヴァイキングによって盗まれた巨額の金――など様々な解釈があり、結局のところサンポがどんなものなのかは未だ謎のままです。

しかし、どの物語でも共通しているのは、サンポは「永遠の富の源」と人々から呼ばれていた人工物で、それを作れるのはセッポ・イルマリネンだけだったということです。

そのためサンポを作る鍛冶屋を連れてくるとロウヒを説得しました。ワイナミョイネンは困難な旅を経て、カレワラに帰郷しました。

So he convinced Louhi to send him home and fetch the smith. Though the journey was far from easy, the bard finally made it back to Kalevala.

しかし、本当の困難はここから始まったのです。

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「永遠の富の源」サンポを巡る賢者と魔女の戦い

どうにかカレワラに戻ってきた賢者ワイナミョイネンは、セッポ・イルマリネンに北の国に行くようにお願いします。ですが、セッポ・イルマリネンは魔女や人食い獣のいる北の国に行くのが嫌なため、賢者ワイナミョイネンの願いを断ります。

律儀に魔女との約束を守ろうと賢者ワイナミョイネンは一計を案じます。セッポ・イルマリネンを騙して巨木に登らせたあと、大きな嵐を呼んで彼を魔女が住むポポヨラまで強引に連れて行ってしまうのです。

最初は気の進まなかったセッポ・イルマリネンでしたが、北の国の人々におおいに歓迎されて、ロウヒの美しい愛娘との結婚も約束されるに至り、「必ずサンポを作る」とロウヒに宣言してしまいます。その宣言通り、セッポ・イルマリネンは三日がかりでサンポを作り上げます。しかし、完成したサンポ見るやいなや、ロウヒはすぐにサンポを山奥に隠してしまいました。

セッポ・イルマリネンを驚かせたのはそれだけではありません。結婚を約束していたはずの愛娘から婚約を破棄されてしまい、なにも得るものがなく失意のままセッポ・イルマリネンは北の国を去ることになるのです。

月日は流れ、サンポのおかげで北の国はおおいに反映していました。しかし、賢者ワイナミョイネンとセッポ・イルマリネンは、それとは逆に富も妻もいなく、この状況に大いに腹を立てていました。

ワイナミョイネンは不公平さに憤り、サンポ奪還への旅を提案し2人はレンミンカイネンの助けを借りて船で北の国へ向かいました。レンミンカイネンは男前でしたが、問題をよく起こす若者でした。

Bitter about this injustice, the bard proposed a quest to retrieve the Sampo, and the two sailed north with the help of Lemminkäinen— a beautiful young man with a history of starting trouble.

そうしてポポヨラに到着した賢者ワイナミョイネンは、ロウヒにサンポの利益の半分を要求しました。もし、ロウヒが要求に応じなければ三人はサンポを奪うつもりでいたのですが、ここまでくるとどっちが悪人なのかわからないですね。

もちろん、おとなしくロウヒが要求に応じるわけがなく、逆に賢者ワイナミョイネンの申し出に腹を立ててロウヒは軍隊を招集して賢者ワイナミョイネンに戦いを挑んだのです。

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まとめ:「永遠の富の源」サンポが最終的に生み出した富は『塩』

ロウヒの軍隊が揃ったところで、賢者ワイナミョイネンは魔法のハープを弾いて、ロウヒと軍隊全員を眠らせてしまいます。その隙にサンポを難なく盗み出し、ポポヨラを後にしました。

しかし、ここで話は終わりません。サンポを手に入れて気を良くしたレンミンカイネンが、賢者ワイナミョイネンが止めていたにもかかわらず、勝利の歌を歌ってしまったのです。歌声は魔法のハープと違って、レンミンカイネンの歌声はドラえもんに出てくるジャイアン顔負けの歌唱力でした。

あまりにひどい歌声に、近くにいた鶴が驚いて甲高い鳴き声を出したため、ロウヒと軍隊が目を覚ますと、すぐさま賢者ワイナミョイネンの乗る船へと襲い掛かってきました。ロウヒはサンポを奪い返そうと、巨大なワシへと変身します。

ロウヒがサンポを爪でつかもうとした途端、サンポは海に落ち粉々に砕かれてしまい、ロウヒの爪が届かないほど深くへと沈んでいきました。

海底に埋まり強大な力をもつサンポの破片は、深海の神であるアハティのもとで、今もなお海の塩を生み出し続けています。

She managed to grab the Sampo in her claw, but just as quickly, it dropped into the sea, shattering into pieces and sinking deep beyond her talon’s reach.

Buried on the ocean floor, the remnants of this powerful device remain in the realm of Ahti, god of water— where they grind salt for the seas to this very day.

さて、この物語はなにを伝えようとしたのでしょうか。サンポを作るために、その材料として残酷な武器と多くの収穫物が必要としました。そうして出来上がったサンポは、国に多くの富を残しました。ですが、それを嫉んだもはや賢者と呼べない賢者ワイナミョイネンが、仲間を引き連れてサンポを力づくで奪い取りに来ます。

ですが、結局はサンポは取り合いの結果、砕け散った挙句に破片が海底に埋まり、深海の神であるアハティのもとでその破片が、すべての人に海の恵みとして塩をもたらし続けているのです。タイトルの通り、本当の富とは、そして強欲はどのようなことをもたらすのかを伝える「サンポをめぐるフィンランド神話」でした。この話を読んで、あなたはどんな感想を持ちましたか?

英語全文

After a savage seafaring skirmish and eight long days of being battered by waves, Väinämöinen— a powerful bard and sage as old as the world itself— washed up on the shores of distant Pohjola.

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Unlike his home Kalevala, Pohjola was a dark and frozen land, ruled by Louhi, “the gap-tooth hag of the North.” The cunning witch nursed Väinämöinen back to health but demanded a reward for returning him home. Not content with mere gold or silver, Louhi wanted what did not yet exist— the Sampo. To be forged from “the tips of white-swan feathers,” “the milk of greatest virtue,” “a single grain of barley,” and “the finest wool of lambskins,” this artifact was said to be an endless font of wealth. But Väinämöinen knew that only Seppo Ilmarinen, the Eternal Hammerer who forged the sky-dome itself, could craft such an object. So he convinced Louhi to send him home and fetch the smith.

Though the journey was far from easy, the bard finally made it back to Kalevala. But Ilmarinen refused to go to the gloomy North— a land of witches and man-eaters. But keeping true to his word, Väinämöinen tricked Ilmarinen into climbing a giant tree, before summoning a mighty storm to carry the smith all the way to Pohjola. Ilmarinen was well received in the North. Louhi lavished her guest with extravagant hospitality and promised him the hand of her beautiful daughter— if he could craft what she wished. When she finally asked if Ilmarinen was capable of forging the Sampo, the powerful smith declared he could indeed accomplish the task. But try as he might to bend the forge to his will, its fires only produced other artifacts— beautiful in appearance but ill-mannered in nature. An elegant crossbow that thirsted for blood and a gleaming plow that ruined cultivated fields among others.

Finally, Ilmarinen summoned the winds themselves to work the bellows, and in three days time he pulled the Sampo, with its lid of many colors from the forge’s flames. On its sides the smith carefully crafted a grain mill, a salt mill, and a money mill. Louhi was so delighted with the object’s limitless productive power that she ran off to lock her treasure inside a mountain. But when Ilmarinen tried to claim his prize, the promised maiden refused to marry him, and the smith had to return home alone.

Years passed, and while Pohjola prospered, Ilmarinen and Väinämöinen were without wives or great wealth. Bitter about this injustice, the bard proposed a quest to retrieve the Sampo, and the two sailed north with the help of Lemminkäinen— a beautiful young man with a history of starting trouble.

Upon arrival, Väinämöinen requested half the Sampo’s profits as compensation— or they’d take the artifact by force. Outraged at this request, Louhi summoned her forces to fight the heroes. But as her army readied for war, the bard played his magic harp, Kantele, entrancing all who heard it and sending Pohjola into a deep slumber. Unimpeded, the three men took the Sampo and quietly made their escape.

Lemminkäinen was ecstatic at their success, and demanded that Väinämöinen sing of their triumph. The bard refused, knowing the dangers of celebrating too early. But after three days of traveling, Lemminkäinen’s excitement overwhelmed him, and he recklessly broke out in song. His awful singing voice woke a nearby crane, whose screeching cries roused the Pohjolan horde. The army made chase. As their warship closed in, Väinämöinen raised a rock to breach their hull. Undeterred, Louhi transformed into a giant eagle, carrying her army on her back as they attacked the heroes’ vessel. She managed to grab the Sampo in her claw, but just as quickly, it dropped into the sea, shattering into pieces and sinking deep beyond her talon’s reach.

Buried on the ocean floor, the remnants of this powerful device remain in the realm of Ahti, god of water— where they grind salt for the seas to this very day.

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本を読む気はないけれど、北欧神話がどんなものか知りたいと思った方は、中田敦彦さんのYouTube大学がオススメです。

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