TED

「今」は続かない!―「歴史の終わり」という錯覚(TED)

子どもと大人

ライフハックとしてではなく、英語学習にも極めて有用なのが、著名人が10分程度のプレゼンを行うTEDです。

TED Talksとは、あらゆる分野のエキスパートたちによるプレゼンテーションを無料で視聴できる動画配信サービスのことです。10年ほど前にサービスが開始されてから、政治、心理学、経済、日常生活などの幅広いコンテンツが視聴できることから人気を集めています。

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TEDは4000を超える膨大な数の動画があります。しかし慣れないうちは、動画の探し方や視聴のコツが分かりませんよね。この記事では、数多くのTEDを見てきた管理人(塩@saltandshio)が、心を揺さぶられたトークをあらすじと一緒にご紹介します。

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ベンス・ナナイ:「歴史の終わり」という錯覚

ベンス・ナナイ:「歴史の終わり」という錯覚

私達は現在の技術が未来を変えるということをよく予想し損なってきました。最近、自分への見方にも同じ傾向があるのが分かりました。私達は自分の変化を予想できないのです。でも、今の自分がずっと続くと仮定することに、何か具合の悪いことはあるのでしょうか? ベンス・ナナイが、自分を最終形態と見なすことの帰結について騙ります(約4分)。Bence Nanay / The “End of History” Illusion.

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人間とは100年経っても同じことを言う生き物

トヨタは2022年11月16日、5代目の新型「プリウス」を世界初公開しました。スポーティで斬新な外観デザインが話題を呼んでいますが、そもそもの自動車のはじまりは1769年の蒸気の力で走る「蒸気自動車」が起源と言われています。

自動車のはじまりは、現在のようにガソリンエンジンではなく、蒸気の力で走る「蒸気自動車」が起源と言われています。蒸気自動車が生まれたのは1769年ころのことです。

TOYOTA クルマこどもサイトより

当時、鉄道が地域を繋いで人々を運び始めた頃でした。多くの人は、「自動車が馬を置き換えるわけがない」と言っていましたが、その予想をはるかに上回り、現代では自動運転のシステムがどんどん開発されています。ほかにも、電話、ラジオ、テレビ、コンピューターや家電に至るまで、技術の進化はすさまじいものです。

しかし、どの時代にも「そんなものは普及しない」と言う専門家がいました。それは今も変わらず、どこにでもいます。なぜ、私たちはいつの時代になっても未来の予測をし損なうのでしょうか。

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人は自分の将来の変化を予想できない

年末年始になると、決まって雑誌やテレビなどのメディアを賑わせるのが「次は●●の時代!」という言葉と共に、紹介される様々な商品や時事ではないでしょうか。

もちろん、未来がどうなり、どんな新発明が現れるのか、正確に予測することはできません。しかし私たちは、現在の技術が未来をどう変えるかの予想も、よくし損なっています。

Of course, we can’t predict exactly what the future will look like or what new inventions will populate it. But time and time again, we’ve also failed to predict that the technologies of the present will change the future.

最近の研究では、こうした商品や時事に関する事だけではなく、自分自身に対しても人は将来の変化をうまく予想することが出来ないことがわかりました。これは、3人の心理学者が発表した2013年の論文「歴史の終わりという錯覚」のなかで語られています。

歴史の終わりという錯覚(End of History Illusion)とは、年齢を問わず、自分は現在までに大きな成長や嗜好の変化を経験したが、将来は実質的に成長・成熟しないと考える心理的錯覚である。

End of History Illusionとは / Wikipediaより
End of History Illusion (SCIENCE)/ JORDI QUOIDBACH, DANIEL T. GILBERT , AND TIMOTHY D. WILSON

人は将来の変化をうまく予想することが出来ないとは、一体どういうことなのでしょうか。具体的に見ていきましょう。

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多くの人が自分自身の未来を過大評価している

論文は、18歳から68歳までの7000人を対象に行った調査をもとに行われました。

  1. 現在の性格
  2. 価値感
  3. 好み
  4. (a)10年前はどうだったか/(b)10年後の自分はどうなっているか

被験者を半分に分けたあと、aチームには下記の1~3に加えて(a)の問いを答えてもらい、bチームには1~3と(b)の問いを答えてもらいます。そして出された答えをもとに、それぞれの被験者が経験ないしは予想した変化の度合いを計算し、それぞれの年齢層について経験した変化と、予想する変化の大きさを比較して行われました。

たとえば、18歳が予想する変化量と、28歳が経験した変化量とを比較するという具合です。

So they compared the degree to which 18-year-olds thought they would change to the degree to which 28-year-olds reported they had changed.

すると、どの年齢層でも若い側が予想する変化は、年配側が経験した変化よりもずっと小さいことがわかりました。年収だったり、食べ物の好みだったり、友人関係だったり、働き方や暮らし方など、おおくのことに予想した未来よりも実現度が小さかったのです。

このことから、多くの人は10年後の自分は「いま」よりもずっと良い生活を送っているはずだという、自分を高く見積もる予想をしていたことがわかり、これが「人はいつの時点でも自分を最終形態と見なしている」という、「歴史の終わりという錯覚」として論文で述べられたのです。

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多くの人が自分自身の変化を過小評価している

この実験でさらにわかったことがあります。

全体として年配の人は若い人より変化が少ないですが、自分の今後の変化を過小に予想している点は同様です。

While older people changed less than younger people on the whole, they underestimated their capacity for change just as much.

ほとんどの人が、体の変化や、交友関係、趣味嗜好もそれほど変わらずにこの先10年過ごしていくだろうと、予想していました。その理由は、個人的変化は概ね過去のものと思う傾向があるからとされ、そうした結果から人は「現在の好みに基づいた将来の選択に過剰投資する」傾向があることもわかりました。

わかりやすい例でいうと、買い物のローンや習い事がこれにあたります。もちろん、計画的に支払う人もいますが、将来的に支払いで困る人は「将来の自分はきっと払いきれるはずだ」と、いまの自分が抱える不安を、未来の自分に解消してもらおうと考えているのではないでしょうか。

起業しようとしたり、なにかを始めようとする人、そして誰かと突き合ったり結婚する人のなかにも、「歴史の終わりという錯覚」にとらわれて、「うまくいく自分」ばかりを想像して、現実にはそうならないかもしれない可能性を見落としがちな人もいます。

「歴史の終わりという錯覚」にとらわれないために、私たちはどうすればいいのでしょうか。

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まとめ:自分と同様に社会も変化していくもの

実際のところ、将来のことは誰にもわかりません。そして、「歴史の終わり」という錯覚が無ければ、長期的な計画を立てるのが難しいのもまた事実です。それは、個人だけの話ではなく、社会や世界も同じことが事がいえます。

これからきっとよい社会になると思うことは、ダメになる一方だと思うよりも、将来が明るく見えるものです。

歴史上の私達のいる時点は、歴史の終着点ではないというのは、安心の元にも、心配の種にもなりえるものでしょう。

Our own historical moment isn’t the end of history, and that can be just as much a source of comfort as a cause for concern.

大切なのは、先の計画を立てる時、良いことばかり考えずに、そうならなかった場合も含めて考えることではないでしょうか。そうすれば、未来の自分に過大に期待することも、激しく失望することもなくなります。大切なのは、良いことと悪いことの中間を見ようとする冷静な視点かもしれません。

英語全文

When trains began to shuttle people across the coutryside, many insisted they would never replace horses. Less than a century later, people repeated that same prediction about cars, telephones, radio, television, and computers. Each had their own host of detractors. Even some experts insisted they wouldn’t catch on.

<全文を読む>▼クリック▼

Of course, we can’t predict exactly what the future will look like or what new inventions will populate it. But time and time again, we’ve also failed to predict that the technologies of the present will change the future. And recent research has revealed a similar pattern in our individual lives: we’re unable to predict change in ourselves. Three psychologists documented our inability to predict personal change in a 2013 paper called, “The End of History Illusion.” Named after political scientist Francis Fukuyama’s prediction that liberal democracy was the final form of government, or as he called it, “the end of history,” their work highlights the way we see ourselves as finished products at any given moment.

The researchers recruited over 7,000 participants ages 18 to 68. They asked half of these participants to report their current personality traits, values, and preferences, along with what each of those metrics had been ten years before. The other half described those features in their present selves, and predicted what they would be ten years in the future. Based on these answers, the researchers then calculated the degree of change each participant reported or predicted.

For every age group in the sample, they compared the predicted changes to the reported changes. So they compared the degree to which 18-year-olds thought they would change to the degree to which 28-year-olds reported they had changed. Overwhelmingly, at all ages, people’s future estimates of change came up short compared to the changes their older counterparts recalled. 20-year-olds expected to still like the same foods at 30, but 30-year-olds no longer had the same tastes. 30-year-olds predicted they’d still have the same best friend at 40, but 40-year-olds had lost touch with theirs. And 40-year-olds predicted they’d maintain the same core values that 50-year-olds had reconsidered. While older people changed less than younger people on the whole, they underestimated their capacity for change just as much. Wherever we are in life, the end of history illusion persists: we tend to think that the bulk of our personal change is behind us.

One consequence of this thinking is that we’re inclined to overinvest in future choices based on present preferences. On average, people are willing to pay about 60% more to see their current favorite musician ten years in the future than they’d currently pay to see their favorite musician from ten years ago. While the stakes involved in concert-going are low, we’re susceptible to similar miscalculations in more serious commitments, like homes, partners, and jobs. At the same time, there’s no real way to predict what our preferences will be in the future. Without the end of history Illusion, it would be difficult to make any long-term plans.

So the end of history illusion applies to our individual lives, but what about the wider world? Could we be assuming that how things are now is how they will continue to be? If so, fortunately, there are countless records to remind us that the world does change, sometimes for the better. Our own historical moment isn’t the end of history, and that can be just as much a source of comfort as a cause for concern.

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